2
夕暮れが押し迫る。
西日が直に当たるおかげで背中が暑いが、それもあと少しの辛抱だ。
日が沈めば、夏とはいえこの辺りは涼しい。
「今日も課外だったんですか?」
あぁ、とだけ返事すると、遥は視線を前に戻しながらため息をつく。
「大変なんですねぇ」
「まぁ、受験生だし」
そりゃそうですけど、と遥は小さく呟いたあと、軽く俯いた。
「なんか寂しいなぁ」
その言葉に胸がわずかに高鳴る。
「寂しい?」
確かめるように尋ねると、遥は口を尖らせながら僕を見上げた。
「だって先輩部活にも全然顔出してくれないじゃないですか。いくら引退したからって、薄情ですよ」
薄情って……。
「仕方ないだろ? 勉強で忙しいんだから」
「分かってますけど……やっぱり先輩に会えないのは寂しいです」
「……」
これは、期待していいのだろうか?
でも。
「って、皆言ってますよ?」
そうくるだろうことは、予想がついていた。
予想していたとはいえ、やはりショックだ。一瞬舞い上がった心を、当人によって突き落とされた。
分かっている。遥にとって僕は先輩というだけだって。
「……分かった、その内顔出すよ」
遥の短い髪の頭をぽんぽんと叩きながら答えると、遥は見る見る笑顔になってはしゃぎだした。
「ホントですか!? 約束ですよ?」
ん、と頷きながら目を細める。
わーい、と嬉しそうにしている遥を眺めながら、僕としては逢いたい子にだけ逢えればそれでいいのに、と小さくぼやいた。
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