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 夕暮れが押し迫る。
 西日が直に当たるおかげで背中が暑いが、それもあと少しの辛抱だ。
 日が沈めば、夏とはいえこの辺りは涼しい。


「今日も課外だったんですか?」


 あぁ、とだけ返事すると、遥は視線を前に戻しながらため息をつく。


「大変なんですねぇ」

「まぁ、受験生だし」


 そりゃそうですけど、と遥は小さく呟いたあと、軽く俯いた。


「なんか寂しいなぁ」


 その言葉に胸がわずかに高鳴る。


「寂しい?」


 確かめるように尋ねると、遥は口を尖らせながら僕を見上げた。


「だって先輩部活にも全然顔出してくれないじゃないですか。いくら引退したからって、薄情ですよ」


 薄情って……。


「仕方ないだろ? 勉強で忙しいんだから」

「分かってますけど……やっぱり先輩に会えないのは寂しいです」

「……」


 これは、期待していいのだろうか?

 でも。


「って、皆言ってますよ?」


 そうくるだろうことは、予想がついていた。
 予想していたとはいえ、やはりショックだ。一瞬舞い上がった心を、当人によって突き落とされた。

 分かっている。遥にとって僕は先輩というだけだって。


「……分かった、その内顔出すよ」


 遥の短い髪の頭をぽんぽんと叩きながら答えると、遥は見る見る笑顔になってはしゃぎだした。


「ホントですか!? 約束ですよ?」


 ん、と頷きながら目を細める。
 わーい、と嬉しそうにしている遥を眺めながら、僕としては逢いたい子にだけ逢えればそれでいいのに、と小さくぼやいた。

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