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「そういえばさ、久しぶりだな、こうやって遥と帰るの」
家に近い角を曲がった辺りで、僕はふと思い出した。
確かあれは、中学二年の……。
「え、私先輩と一緒帰ったことありましたっけ?」
微かな記憶を頼りに懐かしさに浸ろうとしていた僕の頭は、彼女の一言で一瞬にして思考を停止した。
「…………」
何も言わずに(というか言えずに)立ち止まった僕を、遥は不思議そうに見つめる。
覚えてない?
皮肉なことに、彼女が覚えていないと分かった途端、さっきまで微かだった記憶がはっきりと蘇ってきた。
あれは僕が中二、遥が中一のとき。
部活が終わって、偶然下駄箱のところで会って、会話の流れで家が近所なことを知って一緒に帰ったんだ。
あの日もあんな夕暮れで、それから……。
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