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あの日と変わらない景色がそこにあった。
周りにはコスモスやらススキやら、秋を思わせる草木がちらほらと見れた。
「あれー、柳だ」
なんてタイミングで現れるんだこの男は。
木瀬がコンビニの袋を抱えたまま、歩道から声をかけてきた。
「実家帰りか?」
「あー、まぁ」
歯切れ悪く濁しながら、袋から缶コーヒーを投げ渡してきた。
「こんなとこで何してんの」
「……べつに」
「はは、あの時と一緒かよ」
ハッとした。
木瀬も覚えてたのか。まぁそんな昔じゃないが。
「なんか、悩んでる?」
自分の分のコーヒーを飲みながら、木瀬が下に降りてきた。
「あの時と同じ顔してるからさ」
「悩んでんのか、俺……」
「しかも自覚なしかよ、手に負えねー」
その場に座り込んで、バンダナのない髪を風になびかせる。
あの日よりも幾分か伸びたそれは、陽に当たり鮮やかに映えた。
(俺が……持っているもの……)
それは少ない。
木瀬がいなければ、陽光にもいなかったかもしれない。
俺よりは比較的登校していた木瀬に、最初は何となく会いに行っている感覚だった。
木瀬は俺と同じくらい喧嘩が強いくせに、学園の生徒にはほとんど恐れられているようには見えなかった。
少なくとも、俺のクラスにはそんな奴はいなかった。
理由はすぐに分かった。
木瀬は、学園では派手な喧嘩をしなかった。
「親がうるさいからさぁ」
聞くと、そんなことを言っていた気がする。
上級生なんかにも、喧嘩は程ほどにしろよなんて内容ではあったが、気さくに声をかけられていた。
まあ、学年上がってから下級生が怯えてるのは見たことあるが……今思えば、あれは怯えではなく、憧れだったんじゃないかとも思う。
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