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澤村の言っていたスられると言う言葉とは関係ないのかもしれないが――。
俺の持っているものは、木瀬くらいしか思い浮かばなかった。
◆ ◆ ◆
木瀬を部屋に誘うと、珍しいなーなんて言いながら木瀬が付いてきた。
それで今朝の仕返しに同室のやつを追い出して、誰にも邪魔されないように鍵をかける。
「……柳、鍵をかける意味は?」
「誰にも邪魔されたくねーんだよ」
「それは、どう言う意味での邪魔……」
「実は今朝――」
若干引き釣る木瀬に向き直り、澤村のことを話そうと肩を掴んだ。
その瞬間。
「うぉあ!?」
「あ、わり……つい」
なんで投げ飛ばされてんの、俺……。
「で、何の話?」
「その前に、不自然に距離を感じるんだが」
「いいからいいから」
何がいいのか解らないが、仕方なくそのまま会話をはじめる。
俺が一通り澤村とのやりとりを説明すると、木瀬はなにかしら考え込んでいた。
「……やばいな」
「あ?」
「白河だよ。もしかしたら澤村は、何かしでかす気なのかもしれない」
「そうか? それなら俺に直接言う意味あんのかよ」
「挑発だろ。柳なら簡単そうだし」
「んだとコラ」
「ま、そのスるってのが、澤村なのか第三者なのかは解らないけどなー……」
「…………」
「なに」
じっと木瀬を見てたら、不思議そうに首を傾げられた。
「いや、俺はてっきりお前のことかと……」
「なっ――」
一瞬止まって、木瀬が微かに動揺した。
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