4 あの日と変わらない景色がそこにあった。 周りにはコスモスやらススキやら、秋を思わせる草木がちらほらと見れた。 「あれー、柳だ」 なんてタイミングで現れるんだこの男は。 木瀬がコンビニの袋を抱えたまま、歩道から声をかけてきた。 「実家帰りか?」 「あー、まぁ」 歯切れ悪く濁しながら、袋から缶コーヒーを投げ渡してきた。 「こんなとこで何してんの」 「……べつに」 「はは、あの時と一緒かよ」 ハッとした。 木瀬も覚えてたのか。まぁそんな昔じゃないが。 「なんか、悩んでる?」 自分の分のコーヒーを飲みながら、木瀬が下に降りてきた。 「あの時と同じ顔してるからさ」 「悩んでんのか、俺……」 「しかも自覚なしかよ、手に負えねー」 その場に座り込んで、バンダナのない髪を風になびかせる。 あの日よりも幾分か伸びたそれは、陽に当たり鮮やかに映えた。 (俺が……持っているもの……) それは少ない。 木瀬がいなければ、陽光にもいなかったかもしれない。 俺よりは比較的登校していた木瀬に、最初は何となく会いに行っている感覚だった。 木瀬は俺と同じくらい喧嘩が強いくせに、学園の生徒にはほとんど恐れられているようには見えなかった。 少なくとも、俺のクラスにはそんな奴はいなかった。 理由はすぐに分かった。 木瀬は、学園では派手な喧嘩をしなかった。 「親がうるさいからさぁ」 聞くと、そんなことを言っていた気がする。 上級生なんかにも、喧嘩は程ほどにしろよなんて内容ではあったが、気さくに声をかけられていた。 まあ、学年上がってから下級生が怯えてるのは見たことあるが……今思えば、あれは怯えではなく、憧れだったんじゃないかとも思う。 ←→ |