diabolik lovers
それでも満たされるのは、貴方がいるから。


無神ルキ×エリア



「るーくーん、クッキー作ったのー、紅茶も持ってきたよー、入っていーいー?」



………む、無言…。



久しぶりにお菓子を作りたくなって簡単にできるクッキーをセレクト。しっとりと焼けて味も見た目も120点満点!とルンルン気分でルキくんの元へお裾分けしにいったのに…扉越しに呼びかけても応答なし。これ絶対ウザがられてるよね?早く立ち去れ、ってオーラだよね?



「るーくーんー!いないのー?」


諦めないことが大事、たぶん。私がうんともすんともない扉に向かい精一杯呼びかけていると…



「あァ、!!うぜェんだよ!!黙れ!!」



怒号とともに隣の扉が吹っ飛んだ。バラバラと崩れ落ちる扉の残骸越しに見えたのは…


「あ、ユーマ!なんかるーくん居ないみたい…。クッキー作ったんだけど食べる?」

「お、旨そうじゃねェか」


先ほどの苛立ちはどこへいったのだろう、機嫌良くユーマが私の持っていたお盆を覗きこんだ。
ああ、そんなに私がつくったクッキーが美味しそうに見えるのね!


「って何食べてんの!それ紅茶の角砂糖だから。私がつくったのはこっち!クッキーなの!」


クッキー?んなもん食えるか、しかもお前が作ったんだろ?と不躾にのたまうユーマに腹が立ち、ぎゃあぎゃあ廊下で騒いでると、突然ガチャリと扉が開いた



「…主人の部屋の前で騒ぎ立てるとは‥お前は礼儀というものを知らないのか…」


いいからは入れ…ルキくんはひどく不機嫌気味にそれだけ言うと、自室へと私を招き入れた。



「わっかりやすいヤツ……。」



エリアから先程奪った角砂糖を一つ口に含む。俺たちですら自室なんかに入れねーっつのに。


ユーマは珍しいモノをみたと得した気持ちで自分の部屋へと戻っていった


ーー


「るーくん今度は何読んでるのー?」

「……、」


ルキくんの部屋のソファにゆっくり腰をかけると、隣に座っていた彼に話しかける。しかし全く相手にされず。あたかも私なんて居ないかのようだ。ぱらり、ぱらりと分厚い本のページを捲る音のみしか聴こえない。



(邪魔しちゃったかな…でも傍にいたいし)



そっとガラスのテーブルに置いてあった本に手を伸ばす。上巻と書いてあるので、おそらく今ルキくんが読んでいるのは下巻だろう。



(付箋がたくさんついてる、)



パラパラとページを捲るとルキくんがつけたのだろうか、行の端に付箋がついていた。



(ルキくんが大切だと思ってつけた箇所か‥)



本はフラ語で書かれており、単語くらいしか読めなかったけど、先程までルキくんがこの本を読んでいた…この箇所に付箋をつけたのだと思うとなんだか無償に愛おしく思えてきた


ちゅ、


そっと付箋にキスをする。この本を通じて私の気持ちがルキくんに伝わりますように、なんて思いながら。



「…おい、何をしている?」


突然声が聴こえたかと思うと、本を開きながらルキくんが私を真っ直ぐ見つめていた



「うええっ!あのっ!そのっ!!」



(あああ、見られてた!恥ずかしすぎて埋まりたいいい!!)



顔から火が出るとは正にこういう時に使うのだろう、羞恥心が身体全体をかけめぐる



「その、あのっ、!大切な本なのに‥‥ごめんなさい」


弁償します、と付け加えるとルキくんは顔を顰めてパタンと本を閉じた



「……お前が唇を落す場所は違うだろう?」


目を細めてくすりと笑うルキくんに目が離せない、この人はどうしてこんなにも艶めいた表情をするのか。



「……おい。早くしろ、紅茶が冷める」


私の唇を催促するようにルキくんは横に座っていた私と向かい合う


「‥んっ‥」


(好きだよ…ルキくん)



今度は付箋にではなく、想いを愛する人の唇にのせた。ゆっくり近づいて触れるだけのキスをすると、やっぱりそれだけじゃ許してくれるはずもなく。




結局紅茶もクッキーも私たちが口にした時は冷めきってしまっていた。



(それでも満たされるのは、貴方がいるから)

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