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SS置場5
転校生11
転校生シリーズ、短い一場面。 なんとなく年内には年内の部分だけにすべきかなと中途半端な感じが
しますがここでカットです。短めの閑話休題。移動中の電車の中でポメラに活躍してもらいました。年内の
更新はこれで最後になります。今年はオフでも色々と変化があった年でした(まだ落ち着いていませんので
今後のサイトの更新状況は読めない状態です)あと1日で新しい年になります。皆様良いお年をお迎え下さい^^











年の瀬も差し迫った家で 母親に "大晦日は二年参りに行くのよね" と確認されて キャスケットは
どきりとして作業の手を止めた
既に仕事納めを済ませた母と2人でお節料理を制作の真っ最中な為、それぞれが料理に
目を向けながらの会話だったせいで母親はキャスケットの様子に気付いていない
そっと息を吐いて顔色が変わってないよなと食器棚に映る自分の影を眺める
(だ・・・いじょうぶ。 このまま話題を変えてしまえば、平気)
そう思うのに 母親は話題を逸らさせてくれなかった
「今年は迷惑掛けないのよ、お正月だからって羽目を外しすぎないでね」
「っう・・・」
一番避けて欲しかった事を言われてキャスケットは詰まった
クリスマスにみんなで集まっての帰り道。
そこで、自分はローからキスをされた
頭の外に追いやっていた件がもやもやと浮かんできて、ううん・・、と唸る

あの時、突然のキスに頭に血が上ったキャスケットは急激に酔いが回ってしまい、結局ローに送られて自宅に戻った。
母親のいう"迷惑"というのは酔い潰れて送られてくるという失態の事なのだが、イコール、『クリスマスのキス』という
出来事に直結していて それを言われるとキャスケットはどうしても赤くなってしまう
「もう、言わないでよ、それは!」
ぶつぶつと言い返すキャスケットをおかしそうに笑って料理の手を動かす母は、まさか2人が恋仲に近い関係だとは
考えてもいないだろう
(クリスマスだって そんなにお酒を過ごした覚えはないんだけど、やっぱり最後のアレがマズかったんだ)
しかも既に学校は冬休みに入っていてあの日以来ローとは顔を合わせていない
二年参りに行こうという約束はクリスマスパーティの時に決めていたから あの後は待ち合わせの時間や場所を
決めるのにメールで連絡したくらいしか接触はなかった
夏休みにも顔を会わせない時期はあったのだけど、あれと今とじゃ状況が違う
(最後に会ったのが、"アレ"で、)
だから、今度顔を合わせた時に自分がどんな反応をしてしまうか分からない
幸い、二年参りの約束は2人きりじゃない。
他にいつものメンツが揃うから案外何事もなく普通に出来るかもしれない
(吉とでるか凶とでるか、半々・・・だけど)
みんなが居るから気まずい事にはならないと思う。
(ううん。もともと、気まずくなるような事じゃ、ない・・・はずなんだけど)
会ってみなければ自分がどうなるか何とも言えないのだ
(ローは、あの時どういうつもりで・・・)

キス、したんだろうか

クリスマスからずっと頭を占めている疑問を キャスケットはもう一度繰り返して ぷるぷると頭を振った






ぽつぽつと集まってくる顔触れを見回してもキャスケットの姿がない
大抵時間より少し早めに来る人間が今日は珍しいな、さては大掃除に夢中になったか もしかすると
お節料理に掛かりきりで時計を忘れたのかもしれない。
そんな事を考えていると、「ごめん!遅れた?」という声がして駅の方から駆けてくるのが見えた
慌てて飛び出してきたのかマフラーは外れかけ、トレードマークの帽子は頭には無く手に掴んでいる
「時間ちょうどくらいじゃねぇの? 安心しろ、キッドがまだ来てねぇ」
どうせ今日も10分くらいは遅刻してくるだろと話すローの前でキャスケットが腰を折ってふぅはぁと息を整えていた
鼻の頭が赤いのはマフラー等の防寒具で顔が守られていなかったからだろう
冷える空気は痛いくらいなのによほど慌てていたのだなと眺めていると、キャスケットはようやく落ち着いたのか
一息大きく息を吐いて身を起こした
「んな、慌てる事なかったのに」
落ちそうになっていたマフラーがローの手できちんと巻き直されていく
手にしていた帽子を被りなおすキャスケットの頬が赤い
ちらりと見えた耳も寒さで赤くなっていて、子供みたいだなと目を細めたところで彼の目元もうっすら赤い事に気付いた

「あ、りがと。」
少し落ち着かない様子で礼を言ったキャスケットが 久しぶり、と話しているのを聞いて
おや、とペンギンは眉を上げた
ローとは相当親しくしているようだったから休みに入ってもなんだかんだと一緒に行動していると思っていたのに
どうやら自分達と同じくクリスマス以来初顔合わせらしい
「あの後、終電は間に合ったのか?」
残りの連中と一緒にジュエリー・ボニーの家に泊まったキラーが話しかけるとキャスケットが目に見えて動揺した。
なんだ、間に合わなかったとは聞いていないが何かあったのかと意識を二人の会話に向けていると
一瞬言葉に詰まったキャスケットがしぶしぶといった様子で「俺は、間に合ったけど・・・」と言葉尻を濁す。
"俺は?"と引っかかった箇所を反芻していると、観念したように白状する声が聞こえた
「・・・ローは、間に合わなくて、結局タクになった。」
さっきまで寒さで、耳や鼻等の一部以外は白かったキャスケットの顔が今や赤く染まっている
「ローは・・・って、同じ時間に出たじゃないか」
キラーの罪のない疑問はますます彼を追い詰めたらしい
不明瞭な声で呻いたキャスケットが言葉に詰まる
それを聞いていたローが笑って横から助け船を出した
「こいつ、あの後 潰れちまって、家まで送ってったからな」
つまり、ローの終電がなくなったのはキャスケットの家から自宅へと戻る電車に間に合わなかったという事らしい
タク代は親が出してくれたんだけどなと話すのを横で聞いているキャスケットはマフラーに隠れるつもりかというほど
顔を首に埋めている
「それじゃ、今日も親に何か言われただろ」
からかう口調でペンギンも会話に混じっていく
「・・・今日は みんなに迷惑かけんなって言われた」
ぶすっとして答えるキャスケットの頭を 帽子ごとわしわしと掴んだローが別に迷惑してねぇよと笑っている。
そっぽを向いていた顔が戻ってきてローと目を合わせた後、慌てて下に視線を落としたキャスケットの頬が、
また少し赤みを増したように見えた



案の定遅れてきたキッドを加えて神社に向かう
見慣れた顔の中にジュエリー・ボニーが居ないのは話が出た時には既に予定が入っていたからだ
「まぁ、親の実家に里帰りってのが定番だからな。俺達は親もこの近辺生まれで"田舎"ってものがないから
年明けに揃って顔を出せばいいだけなんだが」
だから夏の旅行は楽しかったと口々に言われてキャスケットが嬉しそうに鼻の頭を掻いている
集まった連中の中にはそんな仕草をする者は彼以外にはなく、素直な行動が子供らしく見えるのだと
改めて実感して、だからこそキャスケットは皆に好かれているのだと微笑ましく思う
「ここから混んできたな。はぐれんなよ」
先頭を歩いていたキッドの忠告に参道へ目を向ければ既に道幅いっぱいに人で埋め尽くされていた
「うっわ、こんな寒いのによく来るよな、みんな」
「てめえもそのうちの一人だろうが」
「違いない」
忽ちのうちに人混みに揉まれながらなんとか離れないように固まって立ち止まる
参道の周りに立ち並ぶ出店が食欲を刺激する香りを漂わせているのだろうが、まだ敷地内を視界に
入れただけの自分達のところまではその匂いも届いて来ない
この分では開門しても人波が動き出すのは暫く後だろう
「動き出してもちびちびとしか進まねぇぜ」
「そうなの?」
越してきて初めての年越しのキャスケットはここでのお参りは初めてで、参道を埋め尽くしてぐるりと神社の周りを
並んでいる人の列だけで目を丸くしていた。そこへ何度も通い慣れた地元民が説明してやっている
「じりじりとしか進まない上に、周囲に建物がないから吹きっ晒しで寒いのなんの」
「手袋とカイロは必須だ」
「正面を通らずに北参道に回ればまだ進むって言われてるけど、あれ絶対嘘だよな」
「一回そっち回ったことあるけど遠回りしただけ余計に時間掛かったぞ」
やっぱなー、と話しながら並ぶうちに開門の時間が近付いてきたのだろう。気の早いお参り客が後ろから横から
進もうとしていて、狭い空間が更にぎゅうぎゅうに混み合ってくる
「キッドの頭が目立つから、はぐれてもあれを目印に追いつけばいい」
「帽子で髪なんか隠れてるじゃん」
「それでも頭が余裕で飛び出てるから分かんだろ」
ニューイヤーの瞬間は暫く電話も通じないから携帯を当てにすんなよと教えているローがキャスケットの腕を掴んで
引き寄せている
「ちょ、掴んでなくても大丈夫だって」
慌てるキャスケットがてめえはここらに詳しくねぇだろ。土地勘のねぇ奴捜すのは大変なんだと言われておとなしくなる
「迷子のお呼びだしされんのも一興なんじゃねぇ?」
「やめてよ、キッド」
迷惑掛けるなって言われてるのに!と文句を言いながらもローの隣に納まったキャスケットを見下ろしたキッドが
おまえは背が高くないけどその帽子で見つけてやるから安心しろと笑っている
「なんで俺がはぐれる前提なんだよ!」
相変わらず、からかわれちゃ笑いを誘っている転校生は すっかり仲間内に解け込んでしまっていた
毎年の恒例行事も、一人 顔ぶれが増えただけでこんなに騒々しくなるのだから面白い。
今年も良い年だったなと一年を振り返ったペンギンの目の前では、ローに掴まれた手を解くべきかそのままにすべきかと
キャスケットが困ったように眉を上げ下げして百面相していた








 手探りの距離

互いの気持ちを測りかね
触れる手の温度に もしかして、と期待が生まれる












途中からペン視点になっているので後日短めのキャス視点でエピローグみたいなのを書こうかと思います。
オフがバタついていたので今年は年賀イラスト無しになりました。大掃除?ナニソレ美味しいの? ・・ふ・・ふふ。
これからゴミが大量に出るというのに収集日が1週間くらい先になってしまうんだぜー。シクシク


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