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SS置場11
拍手ログ 吸血鬼パロ番外
クーラー病+血祭りでダウンしてました。間があいちゃってすいません!拍手ログで吸血鬼パロのその後の一場面です。






「は・・・」

その街に足を踏み入れたペンギンが一息吐くかどうかのうちに現れた男の姿は驚きよりも先にペンギンの喉から
間抜けた声を引き出した。
探していた対象があまりにも簡単に目の前に現れたからだ。
だが、拍子が抜けたと感じる前に血の匂いと同時に彼の抱える人物が目に飛び込んできた。

「キャスケット?!」
慌てて駆け寄ったペンギンが油断したのは キャスケットの身に何か起こっているのならローは彼を優先するはずだと
考えたからだ。
・・・否。実際、この得体のしれない吸血鬼は腕に抱える意識の無い男を優先していたのだ。
抱えたキャスケットを片方に持ち替え、空いた手が伸びてきたかと思った時には片手で掴まれ建物内に
連れ込まれていた。




ドサッと投げ捨てるように床に転がされる。
文句を言う隙もあらばこそ。引きちぎる勢いではだけられたシャツのボタンが幾つも転がっていく。
それを 気にするまでもなく、ペンギンの上に影が落ちたと思うと 髪を掴んだ手が乱暴に喉元を晒けだす。
つ・・・、と その首をなぞった指が ぷつりと爪を立てた。

大して痛みはなかったが、皮膚が破れたところから血が流れているのが分かる。
だが、それも首筋を伝う感触のみで、部屋の中は既に濃厚な血の匂いが充満していた。
(そうだ、キャスケットは!?)
頭を廻らせる前に、ペンギンの視界に青褪めた彼の顔が飛び込んでくる。
血の気が失せたキャスケットの目は閉じられたまま、ぴくりとも動く気配はない。
息をしているのか不安になるほどの微かな呼吸がペンギンの頬に掛かったが、意識のないキャスケットが自発的に動く様子はなく、
このまま目を覚まさないのではという懸念が襲ってくる。
「おい!キャスケットは、」
大丈夫なのかと、この場で唯一の事態を把握している男に尋ねる言葉を言い終える前に 彼の声が被さった。
「安心しろ。死なない程度で止めてやる」
なにが、と聞き返そうとしたペンギンの目が、息を吐くキャスケットの唇が戦慄くのを捉えた。
意識が戻るのだろうかと見つめるペンギンの視界を背後からの手が覆う寸前、小さく光る何かを見た気がする。
誰かの吐息が首筋に掛かった。
次の瞬間、先程爪で裂かれた皮膚の上に尖ったものが刺さるのを感じたペンギンは 身体から何かが抜け出ていく感覚に襲われ、
そのまま意識を飛ばしてしまった








(・・・誰かの言い争う声が聞こえる)

酒を過ごした翌朝のような酷い頭痛に見舞われ、小さく唸りながら薄く目を開く。
眇めた瞼の隙間から覗くそこは明るい室内で、確か自分が街に着いたのは日が暮れる少し前なのに、どうしてこんなに
明るい日差しが窓から射し込んでいるのかと まだ動きの鈍い頭で考えていると、いつの間にかぴたりとそれまでの
喧噪が止んでいるのに気付いた。

「ペンギン?」
目が覚めた・・・? と、恐る恐るの声音で尋ねているのはキャスケットだ。
「キャ、ス、ケット・・・おまえ、」
怪我はどうしたんだと訊こうとして瞬時に目が覚めた。
「そうだ、起きてて大丈夫なのか!あの大怪我ッ」
ガバッと飛び起きた途端、くらりと揺れた視界に目をつぶる。
何だこれは。
起きた瞬間に感じたように、酷い二日酔いのように目が回って瞼を上げていられない。
(二日酔い? まさか。飲んだ覚えもないのにそんなものになるか)
動きを止め、呻くペンギンを誰かの腕が支えて再びベッドへ横たえられた。
冷たい水で絞ったタオルが目の上に乗せられ、その心地よさに溜息を吐く。
「まだ起きない方がいいよ。貧血起こしてるはずだから」
生まれてこの方 患ったことのない症状を告げられたペンギンが眉を顰める。
「あと半日は眠ってて。今は点滴だけど、眼が覚めたら何か食事を作るから」
言い聞かせるように話すのはキャスケットの声だ。
街に入ってすぐに見た彼の様子は瀕死の重体に見えたのに、穏やかな声はとても重傷の人間のものには聞こえない。

そっと、濡れタオルを持ち上げて見ても、枕元にいる彼の顔色は悪くない。
表情が少し曇っているように見えるのは貧血で寝込んでいるペンギンを心配してのものかもしれない。
「眠っている間に、消えたりしないだろうな」
ここでまた見失うのは堪らないと確認すると、キャスケットは頷いてペンギンの手を両手で握った。
「約束する。ペンギンが目を覚ますまで此処にいるから」
今は休んでと請われて目を閉じる。
本当はまだ体が睡眠を欲していたのだ。こうして瞼を下ろすとすぐにも眠りに落ちそうだった。
「約束、だぞ。 逃げるな、よ・・・」
緩慢になっていく舌を操ってかろうじてそれだけを口にする。
そのペンギンを宥めるようにキャスケットの手が髪を梳き、何度も撫でる心地よさに ペンギンは、ゆっくりと意識を手放していた。





 "食事"の後




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