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SS置場11
吸血鬼パロ4-4
物足りない!って思う人も居るかもしれませんが今回で初期のころの話に繋げようと思って始めたので
キリが良さそうなところで終わります。









伸びて来た手が顎に掛かり、キャスケットの顔を持ち上げる。
検分するように改めて顔を眺めた後、間違いないと頷いた男は断言した。

「そうだ、この顔。一見地味だが化粧映えする顔立ちで」 
脱がせてみりゃスタイルも良かったなと付け加える男の言葉に顔付きが変わるのを止められなかった。
知り得た事実にキャスケットの瞳孔が散大していく。
どくん、どくんと大きく脈打つ鼓動は、もう抑えようとも思わなかった。
――そんなこと、今となってはどうでもいい。
キャスケットがハンターという職に就き、いつの日にか必ず仕留めようと誓った相手が、目の前に、・・・居る?

「殺さず生かしておいたのは気に入ったからだな。普通は一度食ったヤツは相手にしない」
こちらの様子は目に入っているだろうに男は淡々と以前の記憶を語って聞かせる。
彼等が好んで味わうのは処女の生血だと言われている。ましてや、ドフラミンゴは選り好みの出来ない若くて
力のない者なんかじゃないのだ。
「吸血鬼が目を付けた、ってことは・・・」
「生娘に決まってるだろう?」
処女の悲鳴は最高だろうがと顔を歪めて笑うこの男が自分の中に在る忌まわしい血をもたらした者――だなんて、
(胸糞悪い。悪すぎて、吐き気がする)

「ふ・・・・くく、くっ」
喉から漏れたのは低く笑う声だった。
いつしか 話すのを止めたドフラミンゴの前で、感情の制御が利かなくなったキャスケットは声を上げて笑っていた。

「俺は、ついてるのかな? こんな、ハンターを辞めた今になって、探していた相手が見つかるなんて」

話す声がいっそ楽しそうに聞こえることが自分でも不思議だった。
ドフラミンゴは何を考えているのか分からないが、ぴたりと口を閉じてからは ただキャスケットを眺めるだけだ。

顎に掛かる手を振り払った際に顔に被さった髪の間から、ずっと探していた相手を見上げる。
前髪を通して尚ギラギラと光る眼光はその敵意を全く隠す事なく真っ直ぐに男に向かって放っていた。
キャスケットが行動を起こす瞬間、この一年 あちこちと移動しながら一緒に居た相手の顔が頭を過る。

(ごめん。・・・ローにはハンターは止めると約束した。だけど、こいつだけは―――)

敵うはずがないという予備知識も歯止めにすらならない。
その時のキャスケットは、勝機どころか己の身の安全すら頭に無く、この男だけは赦せないという思いに突き動かされて
無謀とも言える相手へと牙を剥いた。








"――ごめん、"

突如聞こえた声にローはおもてを上げ空を睨んだ。

今のは、キャスケットの聲だ。
名を交換し、幾度か与えたキスで結ばれた半分異種族の血を有する相手からの聲が届くのは通常では
起こりえない事態を伝えている。
(ハーフのあいつにゃ呼びかける力なんかねぇ)
そのキャスケットの聲が届いたのだ。
あの馬鹿な人間は、ローの忠告を無視して、また 身の程知らずの能力を使おうとしている。

キャスケットは自分の肉体が能力に耐えうる器じゃないことを知っている。それが力を使わざるを得ない事態に
陥っているのなら、彼の身によほどの事が起こったのだろう。
今、この街には油断ならない相手がいる。少し前に彼のところを辞してきたところだ。

「ドフラミンゴ・・・っ」

キャスケットの傍を離れたのはその存在を気取られない為だった。
だが、厄介な事になったとしても傍を離れるべきではなかったのかもしれない。

ゆら・・・っと、足元から生じる霧にローの体が融けていく。
次に 天へと巻き上がる激しい風に幾つもの蝙蝠に分裂した身を乗せたローは、聲の生じた場所を目指して飛翔した。






戻ったローを迎えたのは夥しい血の海に伏せるキャスケットの姿だった。
彼をこのような姿にした相手は既に此の場を去っていたが、確かめるまでもなく想像した相手の仕業だろう。
人の家だと思って随分と無茶をしてくれたものだ。
「おい。 生きてるか」
呼び掛けに応じない相手へと近寄り、ぴちゃりと足元に跳ねる血に眉を顰めながら屈んで抱き起こす。
(――息はある。 が、時間の問題だな)
血の気が失せ、青を通り越して紙のように白い顔を眺めて考える。
ここまで弱った半妖の男にローの血を送っても その細胞の変化に耐えきれるかどうか怪しかった。
ましてや、本人が嫌がっているのだ。拒絶反応が起こる可能性も高い。
ハーフでありながら自分とは全く考え方の違うキャスケットを興味深い野郎だと思って連れ歩いていたが、
こんなところで終わりになるのか?

まだだ、という思考が頭に浮かんだ。

ローの興味をここまで引く相手は久しくお目に掛かっていない。
人間とは遙かに違う時間を生きるローが、"久しく"と感じるほどの期間の中で、だ。
"まだ、失くすには惜しい"という思いが強かった。
血が結合しない可能性が高いが与えなければ確実に死ぬ。
僅かな可能性に賭けるしかないかとキャスケットの細い首に牙を立てようとしたローは、不意に感じた気配に
その姿勢のまま片眉を上げる。

「これは――あの、ハンターか?」

たった今、街に足を踏み入れたばかりの気配に フッと口角を上げ、ローは身を起こした。
あいつの血なら或いはという着想は死よりは生の方が比重が高い。
「いいタイミングだ。"食事"はしないというおまえには悪いが、これも何かの巡り合わせだ」
己の血で指先まで真っ赤に染まるキャスケットを抱えて立ち上がる。
あの男の傍に運ぶだけでいい。
無意識の状態なら、生命の危機に面した身体は勝手に必要な養分を貪るだろう。

「完全体になるよりはマシだろう。あの男には感謝するんだな」

意識の無いキャスケットにそう囁くと、彼に必要な血を与える男の元へと運ぶべく外へと向かうローの顔には
微かに安堵の色が漂っていた







 出会い、そして再会

追ってきた男との再会は彼の必然





ローの事は分からないと言いつつキャスの人間の部分はローに惹かれてて、ペンギンに惹かれてるのは吸血鬼の方の
血なんですよね…人格が分裂してたら三角関係になってるのですが幸いキャスは一人ですので!ローに愛情という感覚が
ないのとペンギンが行動派なのでCP的にはペンキャスです。あ、母親が赤毛なのでキャスの金髪は実はドフィ譲りです。
そうするとローが発見するまでの空白の時間に何があったのかとか色々と)妄想(下衆いやつ)が捗りますよね


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