SS置場11 出会(前編) L 短い読み切りのはずが寝オチてしまったのでとりあえず冒頭だけ… 「お。なんだか毛色の違うのが入ってきたぞ」 同じテーブルにいたバンの言葉につられて入り口の方へと視線を流す。 「浮いてんなー。誰が呼んだんだろうな、あいつ」 店内は複数の大学の学生の集まりで、その中のどこかのサークルに所属しているのだろう。 誘われて参加したもののこういう騒ぎに慣れていないのか明らかに周囲から浮いていて、所在なげにグラスに 口をつけては珍しそうに周囲の喧騒を眺めている。 物怖じしている気配はないが、周囲の連中には溶け込みきれていない様子がバン同様ローの目を引いた。 「へぇ・・・ 面白そうだ」 それを聞きつけた悪友共は一斉に反対の声を上げた。 「おい、あんな大人しそうなので遊ぶなよ」 場違いだとまでは言わないがこういう場で屯する者とは毛並みが違うのだ。傍に呼んで少しばかりからかってみるのも 一興だろうと笑みを深くする。 完全に面白がっているローには反対したところで無駄だと身に沁みて分かっている彼等は肩を竦めただけで あっさり 説得を諦めた。所詮他人事である、薄情なものだ。 「ほどほどにしといてやれよ?」 「なんでも面白がるんだから性質悪い・・・」 いつもつるんでいる連中の悪態を背後に聞きながら、カウンターから新しいカクテルを取り 目当てのテーブルへと向かった。 「見ない顔だな。こういう集まりは初めてか?」 ローが声を掛けた途端、店内の空気がざわりと動く。 特に目立つのはヒソヒソという女性の声だが、それもそのはず。この集まりの一番の目当てが自分達ではない人間に 近付いたのだからローを狙っていた女達は嘸かし当てが外れたことだろう。 その声が女に留まらず男のものも混じっているのはローの嗜好が男女どちらでもイケるクチだからだ。 現に、こうして今も近付いた相手はおとなしそうな雰囲気の青年だ。 横からの呼び掛けに振り向いた彼は、そこに見知らぬ人間の姿を認めて軽く首を傾けながら質問に答えた。 「ああ・・・、そう。流石に大学生になれば門限がなくなったからね」 今まではこういう場に来るには門限が早すぎて一度も参加できなかったんだと話した青年は行儀の良さそうな微笑みを 浮かべている。 「今どき珍しいな。それじゃ、あまり強いアルコールは無理か?」 ローが持参したカクテルを差し出せば、どうかなぁと軽く笑って その青年は素直に受け取った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |