『オレ×オレ』 …2。 金曜の夜、 時間通りに待ち合わせ場所に着くと、 …見つけた。 その場に座り込んで煙草を吹かす後ろ姿だけで、すぐにそれが遊佐だと分かった。 ちょっと猫背な広い背中、無意識に頭を掻く癖も…。 何一つ変わっていない。 …俺の好きなままの遊佐だった。 だけど、昔の面影も無くすっかり変わってしまった俺に、多分アイツは気付かないだろう。 残りの二人が来るまで声を掛けないでいようと、少し離れたベンチに腰を下ろした。 …早く来いよ。 この距離感だけで、辛い。 眼鏡を外し胸ポケットにしまうと、そのまま煙草を取り出した。 ヘビースモーカーだった俺が、今では一日に数本しか吸わなくなっていた。 煙草の銘柄も変えた。 …本当に、あの頃とは何もかもが違うんだと、悲しくなる。 ライターを取りだそうとポケットに手を突っ込むと、目の前に見覚えのあるZippoが差し出された。 俺があげたZippo。 使い込まれてボロボロだったが、確かにそれだ。 「ほら。」 遊佐。 3年のブランクなんて感じさせない程自然に、 昔みたいにニカッと笑い、 まるでついさっき別れたばかりの様な挨拶をしてくる。 「煙草チョーダイ?」 「…自分の吸えよ。」 変わらないな。 素直にそう思った。 …嬉しかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |