『揚羽蝶』 七/五 昨日から降り続いた雨は、やがて初雪となった。 明日、揚羽はここを去る。 「揚羽…。」 暗闇な中、同じ布団で眠る揚羽の髪を梳いた。 愛しい。愛しい揚羽。 このまま、抱き合ったまま一つになれたら、どんなに嬉しいだろう。 だけど、それが無理なことは分かっている。 「…康介さん…?」 目を覚ました揚羽が、僕を呼んだ。 「……」 「…また、泣いてるの?」 「もう、泣いてないよ。」 雪灯の中、青く浮び上がる揚羽。 その白い肌をもう一度吸い寄せると、微かな声で君を告げた。 「結婚式をしよう。」 「?」 「いつか本で読んだんだ。 アメリカでは、教会で愛を誓い合うんだって。」 立ち上がり、ドレスの代わりに白いシーツを身に被らせると、きつく、きつく、手を握り合った。 「死が二人を分かつまで。」 「死が二人を分かつまで…。」 そして、くちづけ。 「君をずっと待ってる。」 「…。」 「愛しているよ。」 「私も…。」 きつく抱き合った。 お互いの温もりを忘れない様に。 [*前へ][次へ#] [戻る] |