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GEASS
君と書いて恋と読む (ジノ→ゼロ♀→スザク←ルル)
ジノ→ゼロ♀→スザク←ルルで、ゼロルル双子な現代高校生パラレる。ユフィ友情出演。
続かないよ。






自分と同じ顔の人間がいるというのは存外不気味なことではあるが、同じなのは顔だけでその本質にはかなり差異がある。そう思ってきた。

「おはよう姉さん」

「おはようルルーシュ」

二人だけで暮らす小さな家。死んだ両親が遺してくれた数少ない物の一つ。
キッチンに香るトーストとコーヒーの匂い。

「早く支度しないとまた遅刻するぞ」

パジャマ姿の私を呆れた様子で一瞥し、すでに完璧に制服を着込んでいる弟は私にコーヒーを渡す。

「大丈夫。抜かりはない」

「そう言ってこの間遅刻していたのは何処の誰だ?」

「あれは私のせいではない。あの体力馬鹿の自転車が途中で壊れたのがいけないんだ」

「あのオンボロ自転車もよく耐えてたよ。毎日全速力で高校生2人運んでいたっていうのに」

「あぁ勿論感謝しているさ」

ミルクが多めのコーヒーを一口啜る。ルルーシュ手作りのイチゴジャムの香りが部屋の中に漂う。
優雅な一時。いつもの朝だ。
そろそろチャイムが鳴るだろう。

「おはよー!!ゼロ、ルルーシュ!!」

「おはようスザク」
「来たな。ただ飯食らい」

ルルーシュはいそいそとスザクの分の朝食の支度を始めた。

「失敬だな。ちゃんと君のこと毎朝送ってるじゃないか」

「そんなことだけで、こんなにも美味しいルルーシュの朝食の対価になるとでも?」

ごちそうさま。
大きな声で言った後、私は自分の分の食器を片付け、着替えをしに自室へと戻った。
扉を閉め、ゆっくりと息を吐き出した。
恐らく今頃スザクはルルーシュの手料理に舌鼓を打っていることだろう。
ズキリと痛む心臓を無視し、勢いよくパジャマ代わりのシャツを脱ぎ捨てる。
スカートに足を通そうとしたその時、控え目なノックの音がした。

「ゼロ?」

スザクの声だった。

「……何だ?」

心臓の鼓動が早くなる。動揺を悟られないようゆっくりと言葉を吐き出した。

「ルルーシュは生徒会の仕事があるから早めに行くって」

「そうか。じゃあ後少しだけ待っていてくれ。すぐに終わるから」

「うん。じゃあ向こうで待ってるね」

足音が遠ざかる。ふと視線を下に下ろすと、自分のあられもない格好に思わず笑みが零れた。
いつからだろう。
ルルーシュが私たちと一緒に学校へ行かなくなったのは。いつでも一緒だったのに。

「待たせたな」

「うん。じゃあ行こうか」

いつからだろう。
見慣れたはずの彼の笑顔が、眩しくて、嬉しくて、胸が痛んで。

「しっかり掴まっててよ」

「何を今更」

いつからだろう。
たかが自転車の二人乗りなのに、こんなにも近付く距離を嬉しく思う。高鳴る心臓音に気付かれたらどうしようと気が焦る。

「でも今日は割りとゆっくり行けるんじゃない?」

「そうだな」

いつからだろう。
彼を好きになってしまったのは。
ルルーシュと同じ人を好きになってしまったのは。
似ているのは顔だけだとずっと思っていた。
それなのに―――






「あっ、ルルーシュだ!!」

学校までの長い坂道。一人で歩くと余計に長く感じられる。

「……ジノか」

元気よく呼ばれた名に振り向くと、少し後方に見慣れた金髪の姿。

「おはようルルーシュ」

「おはようジノ」

さすがはリーチが長いだけある。ジノはすぐに俺に追いついた。

「早いね、どしたの?ゼロとスザクは?」

「生徒会の仕事がまだ残っているんだ。だから俺だけ先に。朝の内にやっておかないと会長がまたうるさいからな。ゼロとスザクも後から来るよ」

「へぇー生徒会って大変だな」

「まぁな。ジノは?」

「俺は週番」

「それはご苦労様」

もうすぐ夏が来る。
衣替えをしたばかりの制服に汗が滲んでゆく。

「大丈夫?ルルーシュ、顔色悪いよ」

空色の瞳に覗き込まれる。
眉尻を下げる困ったような顔はまるで捨てられた仔犬のようだ。

「大丈夫だ。心配いらない」

「そう?なら、いいけど……最近ルルーシュ元気ないし」

ジノの言葉に驚き目を見開いた。

「そっ…そんなことないだろ……」

「ううん。そんなことある。ついでに言うとゼロとスザクも最近変」

ジノとは高校に入ってからつるむようになった。それなのに俺たちの中の誰よりも俺たちのことが分かっている。
今度は空色の瞳に優しさが滲んだ。

「……あぁ、お前にも嘘は吐けないんだな」

「野生の勘をなめないでくれたまえ」

『枢木スザクとゼロ・ランペルージは付き合っている』

そんな噂が校内中で真しやかに囁かれ始めたのがつい最近。今ではそれに尾ヒレ背ヒレが付随しすぎてどうにも嘘臭い噂にはなってしまっているが。
だが本人たちは実に平然としていた。
そんことあるわけないだろう。噂を流す奴も見る目がないな。私の(僕の)理想を甘く見るな。
口を揃えてそう言われた。
俺だって彼らを信じたかった。むしろ二人がそういう関係になるなら、噂よりも先に彼らの口から直接伝えて欲しかった。
そうすればきっと、俺はこの世の誰よりも彼らを祝福出来ただろう。
だって今までずっと二人を見てきたんだ。
お似合いの二人だとずっと思ってきてたんだ。

「俺は二人の足手まといにはなりたくない」

「二人ってゼロとスザク?」

無言で頷いた。
きっと二人は俺に気を遣っているんだ。だから言い出せない。そうだろ?

「ルルーシュまだあの噂信じてるの?二人とも否定していたじゃないか」

「だからそれは俺に気を遣ってだな……」

「違うと思うけどな。だってあの二人は絶対ルルーシュにだけは嘘は吐かない」

力強く断言される。
お前が俺たちの何を知っていると一蹴してしまえばいい。だがそれは下らない八つ当たりだ。
……八つ当たり?そうだ。どうして俺はこんなにも苛立ってているのだろう。

「ルルーシュはさ、いいの?それで」

優しくそう問われると何故だか否定の言葉が口を付いて出そうになった。
何故だろう?一番に喜んでやるべきなのに。どうして俺は……スザクとゼロを……

「ルルーシュがやりたいようにやればいい。俺はそう思うよ」

そう言われた瞬間、スザクの笑顔が頭に浮かんだ。

「……ジノ……もしかしたら俺は……」

「うん」

「極度のシスコンなのかもしれない」






「…と言うわけなんですけど、どう思いますか?お姉さん」

放課後になっても、晴れ渡った青空や燦々と降り注ぐ陽射しは衰えを見せない。
窓を開け放しても入って来るのは部活の喧騒。風は頬を撫でる程度だ。

「誰が誰の姉さんだ」

後ろの席で本を読んでいたゼロが顔を上げる。
生徒会の仕事で残っているルルーシュを二人で待っている。そんないつも通りの光景だ(ちなみにスザクは今部活中)

「気付いてないのは本人だけって感じだよね」

「あと相手もな」

いや、もしかしたら相手は気付いているんじゃないかと思ったが、黙っている方が賢明な気がした。

「ルルーシュが早く気付いてくれれば話が早いのに」

呟きながらゼロはサイドの髪を耳に掛けた。白く細い指の滑らかな動きが何とも言えず扇情的で、俺は思わず息を飲んだ。

「そうしたら自分も諦めがつくのにって?」

「まぁそんなところだ」

伏せられる赤みがかった紫の瞳。長い睫毛が白い陶磁器の様な肌に陰影を作る。

「俺、ゼロのこと好きだよ」

「……知ってる」

あぁ。そんなの俺だって知ってる。
だってもう想いは何度も伝えてきたのだから。

「ゼロがスザクを好きなことも知ってる。ゼロがルルーシュに幸せになって欲しいって思ってることも知ってる。だから想いを打ち明けないことも知ってる」

「………………」

「それでも俺はゼロが好き」

強がってばかりいるくせに、本当は誰よりも淋しがり屋で、誰かに傍にいてほしいって心が叫んでる。俺が恋したのはそんな可愛い普通の女の子。

「……悪い」

「謝んないでよ。俺が勝手に言ってるだけなんだから」

悪足掻きだって分かってる。効かないサブリミナル効果。

「お前みたいな優しい奴に私は勿体ないよ」

そう微笑むゼロ。ズキリと痛む心臓。
優しくなんかない。
優しいのはゼロで、俺は狡い。
口でいくら言ったって、好きな相手の幸せですら心の底から祈ることが俺には出来ない。

「人を好きになるって難しい」

「何を今更」

鼻で笑われた。誰かが誰かを想うことで誰かが傷つくなんて。みんな誰かを想ってるはずなのに。
みんなが幸せになる方法なんてあるのだろうか。

「しょぎょーむじょー?」

確かそんな言葉があったような。

「ジノのくせに随分と偉そうだな」

ふいにゼロの視線が窓の外に向けられ
る。その瞬間、ゼロの表情が微かに強張った。
俺も窓の外に視線を向けた。

「スザクと……」

「ユーフェミアだ」

女子剣道部の部長。可愛い顔してスザク以外の男子剣道部員をすべて捻り潰したらしい。

「スザクのタイプはああいうのなのかもな」

そう呟くゼロの表情は何故だか柔らかいものだった。嫉妬や羨望、どろどろとした人間らしい感情を削ぎ落としたような慈愛に満ちた眼差し。

「達観してるねー」

「……そうか?」

「うん。でもさーゼロは本当にルルーシュに譲るつもりなの?自分は身を引いて?」

「あぁ、そのつもりだが?」

「そうするとさ、自分の弟と幼馴染みがゲイカップルになるんだよ?いいの?」

「あいつら二人なら微笑ましいじゃないか」

誇らしげに言う彼女の年相応な笑顔を見て、心の中の何かがすとんと落ちた。

「俺ってやっぱりゼロが好きなんだな」

誰かを好きになる気持ちが、すぐに諦められるものなら良かったのに。
そうしたら世界はもっと単純だったのに。

「みんながジノみたいだったら、良かったのにな」

今日一番辛そうな表情で彼女は俺の名を呼んだ。






「スザクはゼロさんと付き合っている訳じゃないんですよね?」

桃色の長い髪が揺れる。それなのにあの短い黒髪が頭にちらついた。

「うん。そうだけど」

「そうだけど、誰かと付き合う気はない。そうですよね?」

強い藤色の瞳。真摯な表情で問われてはこちらも誤魔化す訳にはいかない。

「そうだね。残念ながら、僕は今が気に入ってるんだ」

ユフィが好きではないとかそんなことは決してない。むしろ好きだ。
だけどそれは伝えられない。伝えてはいけない。

「スザクがもっと酷い人間だったら良かったわ」

「僕は酷い人間だよ?」

「優しすぎるという点で言えばある意味残酷なのかもしれないけど、」

でもどうせなら嫌いになりたかった。諦めをつけさせて欲しかった。
ほら、僕はこんなにも優しくない。

「その気がないのに優しくするのはいけないわ。一応忠告しておきますけど」

にこりと笑う彼女を見て、胸が苦しくなった。
聡い彼女はもうとっくに気づいているだろう。僕の愚かさに。それでもきっと笑ってくれている。

「うん。ありがとう」

「スザクに想われている人が羨ましいわ」

「ユフィをフッたなんて言ったら殴られそうだけど」

「まぁ」

「これは僕のエゴでしかないんだけれど……僕が誰かを選ぶことで誰かが傷つくのなら、僕は選ぶことを放棄したいんだ」

そんなことをしてもだれも救われないことは分かっているのだけれど。

「そうすれば。少なくとも、今は、今この時間だけは幸せでいられる」

本当の気持ちはひた隠して。気付かれないように。誰も選ばないように。

「恋って辛いわ」

「そうだね。痛くて苦しいけど、」

「わたしはあなたに恋をしてよかった」

清々しい彼女の口調。藤色の瞳には溢れんばかりの涙が溜まっている。

「……ありがとう」

涙の粒が一滴。青い空へと溶けて消えた。






優しさなんて忘れてしまえれば良かった。
そうすれば誰も傷つかずにすんだのに。
傷ついて。傷つけて。想って。想われて。
それでも僕らの世界は回ってる。






言えないゼロと気付かないルルーシュと、見ていることしか出来ないジノと伝える勇気のあるユフィと、選ぶことの出来ないスザク。
ある意味平和な世界。
タイトルはRADWIMPSの歌の歌詞から。

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あきゅろす。
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