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GEASS
そこに愛しかないと思う (ジノルル)
ジノはルルのペット。続くかなー(希望的観測)






「最近さぁ、付き合い悪くない?」

同僚から言われた些細な一言。

「彼女でも出来た?」

いいネタとでも思ったのか。同僚はニヤついた笑みを浮かべ、俺に詰め寄った。

「……いないよ、そんなの」

冷静に返すと、同僚は暫し考えた後

「まぁ、今更嘘吐いたって仕方ないもんな」

と妙に納得した様子で、目の前のパソコンに視線を戻した(彼とは高校からの付き合いのため、隠し事の無意味さくらい身を持って知っている)

「犬を飼い始めたんだ」

ポツリと独り言のように呟くと、同僚が

「んーなんだってー」

と目の前のパソコンから目を離さずに、興味無さ気にぼやくので(自分で聞いてきたくせに非常に飽きっぽい奴だ)

「……何でもない」

と言って俺は席を立った。






一日中降っていた雨が漸く止んだ、月の綺麗な晩だった。
普段は綺麗な俺の住んでるマンションのゴミ捨て場に、異様な大きさのダンボールが放置されていたのだ。
基本的に俺は、こういった社会的モラルを逸脱した行いは許せない性質だ。
深夜のゴミ捨て場に、しかもこんな大きなゴミを出すなんて、とんだ不届き者がいたものだ。
俺はそう考え、そのダンボールをどかそうとした。
外側が雨で濡れていたためふやけていたことから、それが少なくとも昼間から放置されていたことが分かった。
何故、誰もコレを処分しようとしないのか。
その疑問は蓋を開けた瞬間に分かった。

「ほえぁあぁぁぁあぁっぁあ!!!!!」

深夜の住宅街に俺の悲鳴が響き渡った。
まさかこんな汚いダンボールの中に、濡れ鼠状態の人間がいると誰が想像できようか(いや、出来はしない)
確かにこんな不審者入りのダンボールなら、どかすことも出来ないし、まさかどいてくれとも頼めないだろう。
俺が暗がりでも薄っすら分かったのは、その人間の髪の毛が見事な金髪だったということくらい。
俺は急いでその場を離れようとした。
もし死体だとしたら、犯人と疑われてしまう。

「…………待って」

ゆっくりと蓋を閉めようとした俺に、声が掛けられた。
生きてるのか?と中を確かめようとそた瞬間、ダンボールから伸びた手に勢いよく腕を掴まれた。

「〜〜〜〜〜〜!!!!!?????」

俺は声にならない叫びを上げ、不覚にも恐怖から涙が出そうになった。






仕方なく家に上げ、シャワーを貸すと、その不審者は見違えるほど綺麗な青年に生まれ変わっていた。
金髪、碧眼、目鼻立ちのくっきりとした顔、痩せて見えるのにしっかりと付いた筋肉、そして何より手足が長く身長が高い。
男の持つべきステータスを全て兼ね揃えたような彼が出て来て、俺は一瞬目を丸くした。

「嫌だなーそんな見つめないでよ」

わざとらしく照れた振りをする彼を見て、俺の持っていた新聞がぐしゃりと歪んだ(決して筋肉とか、高身長が羨ましいなどとは思っていない)

「……ほら、シャワーも浴びたことだし、とっとと帰ってくれ」

いつまでもこんな身元も年齢も住所も名前すらも知らない不審者を、家の中に置いておくわけにはいかない。

「んー……そうしたいのは山々なんだけどねー」

金髪を乱暴にタオルで拭きながら、青年は言葉を続けた。

「まさか、さっきのダンボールがお前の家とか言うんじゃないだろうな」

「…え?そうだけど?」

「………」

「でもアレはさっき壊されちゃったしー」

家の中に招く前に、あの汚らしいダンボールを壊させたのは紛れもなく俺だ(邪魔になるし、住民の迷惑だ)

「………」

「だから俺、行く当ても帰る場所もないんだよねー」

あまりの衝撃から言葉を失っている俺に、青年は女なら絶対に落ちるだろう笑みを浮かべてこう言った。

「俺をココに住まわせてくれない?」

気付いた瞬間にはもう遅かった。
いつまでも呆けている場合ではなかった。
青年はいつの間にか俺の眼前に顔を寄せていて、

「…んっ!!」

ファーストキスが奪われていた。
しかも調子に乗った奴は、舌まで入れてきやがった。

「んっ……んっ……ん〜〜」

呼吸の仕方が分からない俺は、仕方なく奴の胸を叩いてささやかな抵抗をした。
唇が離れた瞬間、俺は涙目のまま大きく肩で息をした。

「初心だなー。かーわいい!!」

ふざけるな!!と本当なら怒鳴り叱り付けたい気は満々なのだが、如何せん今は呼吸すらままならない。
そんなこと出来るはずもないので、目を細め睨み付けた。

「……涙目だよ」

奴はそう言って俺の両目尻を指で拭った。
俺はまた目を丸くして、仰け反った。
こいつは危険だと察知しているはずなのに、何故か体が上手く動かない。

「ねっ?俺もココに住まわせて。ペット扱いでいいから」

捨てられた子犬(あながち間違いではないのかもしれない)のような目で見られてしまった。
そんな顔されて、断れない奴がいるのだろうか(いや、いるわけがない)
俺はゆっくりと頷いた。
それをそのまま肯定と受け取ってくれたらしく、彼はまた俺に抱きついた。

「わーい!!やったーありがとー!!」

「いいか?お前は俺のペットだからな!!そこをきちんと弁えろよ」

「分かりました。ご主人様」

「………それは止めてくれ」

どうやらこの大型犬の浮かべる人懐っこい笑みに、俺は弱いらしい。






「何て呼べばいい?」

差し出したコーヒーを冷ましつつ飲みながら(見た目は犬のくせに猫舌らしい)彼に聞かれた。
そういえば名も名乗っていない奴と、こいつは一緒に住みたがっているのか。
つくづく風変わりというか、物騒というか……まぁ人のことを偉そうにとやかく言える立場ではないが。

「ルルーシュだ」

俺はそれだけ言った。

「ルルーシュ……」

彼は自らの口に馴染ませるようにか、何度もルルーシュと呟いた。

「うん。いい名前だ」

屈託のない笑顔を浮かべて彼は言った。

「偽名だけどな」

「えっ!?ホントに!?」

「冗談だ」

くすくすと俺が静かに笑うと、彼もまた笑っていた。

「笑った顔も可愛いね」

「そういうことは女に言ってやれ」

「キスした時も可愛い顔してたけど……」

「黙れ」

人とこんな風に軽口を叩き合うのは、何年振りだろうか。
そもそもお互い初めて会った者同士なのに、妙に会話のテンポが合う。
こんなのはあの体力馬鹿の幼馴染以来だ。

「それで、お前の名前は?」

「ルルーシュの好きに呼んで」

だって俺ペットだから。
彼はそう言って、言葉を切った。

「……本気か?」

「嫌?」

嫌かどうかと問われても困る。
だが確かに今更こいつを追い出す気もないし、そこまで身分証明に拘る必要もないかという気になった。

「ちょっと待て」

「うん。いいよ、待ってる」

ニコニコ笑いながら、彼はテーブルに頬杖を付いた。
どうしようかと多少悩んだが、結論が出るのは意外と早かった。

「ジノ」

それが今日からお前の名前。
俺は人差し指で、ジノの鼻を突きながらそう言った。

「ジノ……」

彼は一瞬驚いた顔をした後、すぐに嬉しそうに顔を綻ばせ、何度も何度もジノと声に出した。

「ねぇねぇ、ルルーシュ。ジノって呼んで」

ピンと立った耳と、千切れそうなぐらい揺れている尻尾が見えるのは、本当に幻覚ではないのだろうか。

「うるさいぞ、ダメ犬」

「嫌だ。ジノがいい」

「………ジノ」

「わんっ!!」

………後悔先に立たずという言葉の意味が身に沁みて分かった。






「ところでなんで俺はジノなの?」

「昔飼っていた犬の名前だ」

「……さいですか」






Title by "F'"

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あきゅろす。
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