出会い色々。
早いもんで入寮日当日、早めに家を出た俺と幼なじみの俊樹は携帯と財布だけ持って電車に乗り込んだ。
衣類等の荷物は既に配送済み。
三時間電車に揺られて、その後二時間バスを乗り継ぎ、着いた場所は辺り一面に広がる緑。
つまり森、森、森。山しかねぇ。
学園は山の頂上。
遥か先にちんまりと見える建物を見て、深い溜め息を吐いたのが今から一時間前だ。
つまり、既に一時間も歩いているのにまだ学園には辿り着きそうにない。
「大丈夫か、俊樹」
「……大丈夫に見えるの」
いや見えないけど。
俺は体力ある方だから平気だけど、俊樹は本当に体力がない。
一時間歩きっぱなしの今、座り込んで死にそうな顔で荒い息をあげている。
「ほら、お茶」
「んー」
歩き始める前に、ぽつんと山道に佇んでいた自販機で買ったお茶を俊樹に差し出す。
俊樹もポカリを買ったけど、始めの30分で飲んでしまった。
「それ飲んだら歩けそう?」
「まだ無理ー」
うーん……困った。
このままじゃ大遅刻だなー。
早めに家を出たが、この山道を歩いている時点で約束の時間はとうに過ぎていた。
「とーたー」
「……」
甘えたような声で俺を呼ぶ俊樹に、内心(ああ、やっぱり)と思った。
「……ふー。仕方ないな。これ以上遅れる訳にもいかないし。」
「早くしゃがんでー」
「……」
ほらほら、とせがむ俊樹に深い溜め息を吐いて、俺はしゃがみ込む。
そんな俺に俊樹は満足気に笑うと、首に腕を回して体重をかけてきた。
「はぁ。まさかこんな山道で誰かをおんぶしなきゃならないなんてね。」
「グダグタ言ってないでさっさと歩く!!」
「……はい」
なんつー我が儘で傲慢な姫でしょう。
俺は別に君のお付きの人でもナイトでもないんだけどなー
「あー楽チン楽チン」
「そりゃ良かったねー」
俺は楽チンじゃないけどな。とは絶対に言わない。
後が五月蝿いからね、俊樹は。
ここは何も言わず、無心で山道を登ろうじゃないか。
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