04 「処女喪失すンなよ」 「……あのなー」 壱也の言葉に呆れてしまう。 処女て。 「桃汰、桃汰」 「ん?」 この場で唯一と言っていいまともな奴、武彦がちょいちょいと俺を手招きながら呼ぶ。 「なに?」 「桃汰、」 「うん?」 「浮気は許さないからね」 「――は?」 ニコリと笑った武彦の笑顔に身震いしたのは初めてだった。 黒い何かが見え隠れするような、そんな笑み。 あの、もしもし武彦さん? 「……浮気って、」 「しないよね?」 「はい、しません」 勝てなかった。 むしろ勝てる筈がない。 あれ、俺こんなヘタレキャラだったっけ? 「とーたー武彦は優しいけど、中々黒いぞー?」 「報告が遅すぎる件について聞きたいよ!!」 知ってたのか、なぁ知ってたのか? 武彦が腹黒いなんて、まさかと思いたい。 「ああ、それからお前あんまり人前で着替えたりすんじゃねぇぞ」 「いや露出狂じゃないよ俺」 壱也の言葉に即答したら、横にいた零に「そういう意味じゃねぇ」って頭をぶっ叩かれた。 じゃあどういう意味だよ。 「とにかくお前はイエスかはいか言えばいいんだよ」 「うん」 両方同じだよね? だから俺は敢えて「うん」と頷こう。 そうしたらまた零に「生意気やるんじゃねぇ」と悶絶もののデコピンされた。理不尽!! まぁ、なんだかんだ心配してくれているのは十分にわかるから怒るに怒れないのがちょい悲しい。 なんて、そんな事を思いながら騒ぐ四人を見て自然に笑みが零れた。 少しだけ離れてしまうけれど、まぁ、頑張ってみようじゃないか 始まりの唄 END ←→ [戻る] |