008
結局、誰一人自分の胸を打つような返答が無く菊代はガッカリします。自分はもう長くない、早く遺産相続人を決めて気を楽にしたいと思っているというのに。
菊代の切な独り言を聞いて、長テーブルを叩いて立ち上がった人物がいます。
って、あれ? 誰も動きません? …どうやらまた誰かが劇の流れを止めた模様です。
「……フウム、これは誰がするのかね? 僕ではないことは確かだが」
ネイリーが皆に視線を送ります。
「私でもございませんよ」
毅然と菊代が言いました。
「俺でもねぇ。誰だよ、さっさとやれって。流れ止めンな」
どの口がそう言っているのか…しかも雅陽は眠そうです。
「アンタが言えることじゃないわよ、リーダー」
ラーラ、貴方のツッコミはとても正しいです。
「えぇーっと、ミレイユぅのぉー記憶じゃ、確かぁー…うーんとぉ」
可愛らしく(ぶりっ子風に)ミレイユは首を捻ります。
皆が顔を見合わせていると、大きな溜息をついて軽く長テーブルを叩いた人物が。フェリーです。
どうやら彼が流れを止めてしまっていたようです。フェリーはボソボソと皆に言います。
「此処の場面、飛ばせないだろうか?」
「あららぁー、それはダメですよぉー。ミレイユだってぇ、檸檬隊長ラブなのにぃ、ネイリーとイッチャついてるんだからぁ」
「あたしなんてコレの妻役なんだけど」
「俺をコレ呼ばわりにするなんざイイ度胸だな。寝台の上で泣かすぞ」
「フェリー。男ならば、気合で乗り切れ!」
フェリーは思いました。
別に少しくらい飛ばしたって構わないじゃないか。最初なんて、始まって直ぐにお話が終わるという事態になったのだから…と。
「飛ばすことは許されませんでございます」
初っ端からすっ飛ばしたご婦人には絶対言われたくない台詞です。
フェリーは諦め、半分自棄を起こしながら自分の台詞を言い始めました。ということでこちらも、お話に沿ってナレーションをしていきたいと思います。ナレーションは少し前に戻ります。
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