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03-14


 

  
「好きで付き合ってるんだ。気にするな」

 
 ははっ、カッコつけめ。
 お前はいつでもそう言ってくれる奴だよな。ほんと、心の底から愛しちゃうんだぜ。ジミニャーノ。

 「行くぞ」利二の言葉に返事して、俺はタコ沢に声を掛ける。仕方が無さそうに腰を上げるタコ沢はぺったんこな通学鞄を肩に掛けて、逸早く教室を出た。ああやって手を貸してくれるところがタコ沢らしいよな。普段は俺やヨウに闘争心剥き出しなのにさ。
 タコ沢の後を追って俺と利二も後ろの扉から教室を退散。っと、その前に、俺は立ち止まって前橋に会釈。
 

「すみません、前橋先生。荒川と田山は火急の用事ができたため、谷沢と五木を連れてSHRを抜けたいと思います。では、また明日」
 
「田山、抜けるも何も午後サボっただろ?」

 
 「細かいことは気にするなって」一々気にしてたらやってられないぞ、俺の能天気発言に利二は呆れて肩を竦めた。
 こうして何事も無く教室を離脱。いや、正しく教室を飛び出してBダッシュをしたから、事が起きる前に離脱成功。教室から前橋の怒声が聞こえた気もしたけど、今は、今は教師の怒りに構ってられなかった。
 だって浅倉さんがヤられたんだっ、あの楠本に。向こうチームは騒然となっているに違いない。


 ―…何より、蓮さんが心配だ。

 
(ナイーブになってたからな蓮さん。……、まさか楠本は故意的に浅倉さんを狙って?)

 
 可能性は大だな。
 厭に高鳴る鼓動を抑える術もなく、俺は廊下を駆けながら携帯を取り出した。電話を掛けるのは俺等のチームで他校に通っている仲間達―…。
  
  
 
 浅倉さん達のたむろ場は交差点四つ角、某ビル二階ビリヤード場だ。
 古汚い倉庫や有り触れた喧(かまびす)しいゲーセンを拠点にしている俺達と違って、向こうチームは室内にたむろ場を設けている。超贅沢だと思うよ。だって室内、しかもビリヤード場を拠点に出来るなんてさ。誰かのコネで拠点にしてるんだろうけど、堂々悠々室内にたむろ場を設けている浅倉さん達は羨ましい。
 
 狭い階段を上った向こう。
 二チームを受け入れてくれる広々としたビリヤード場で、四時ピッタシに集会が始まった。


 仕切っているのはヨウと涼さん。

 浅倉さんの姿は見えない。彼は病院で手当てを受けているそうだ。幸い、頭部を三針縫う程度の怪我らしく、入院にまでは至っていないそうだ。


 詳細を聞くと浅倉さんはとある路地裏で楠本、もしくは率いる仲間にやられたそうな。
 彼がなんで路地裏に赴いたかっていうと、そこで仲間がヤられたと情報が入ったため。心配して助けに来た浅倉さんに奇襲を掛けたって寸法だ。浅倉さん以外にも仲間はいたそうだけど、皆、ヤられてしまったとか。なんだかゲリラ戦を聞いている気分だ。

 「多分楠本は」自分達の支配下にしている“廃墟の住処”でどんちゃんする予定は毛頭ないんだろう、と桔平さん。
 なにぶん、あそこは自分達のテリトリー。此方があの商店街の構造や内部を把握していることは十も百も承知している筈。付近で奇襲を掛けることはあっても、あくまで決着を付けるのは“廃墟の住処”ではないだろう。
 
 もしかしたら奇襲を繰り返すことで此方の戦力を削り、一気に畳み掛けるのかもしれない。
 桔平さん個人の意見に、涼さんは賛同した。「楠本の悪知恵は榊原から受け継いでいるしな」戦術としては有り得ると苦々しく頷いている。
 
 ちなみに楠本チームの出現場所は特定できていないらしい。
 
 ハジメの案で地図上に出現場所を記してみたけど、見事にばらばら。神出鬼没という四字熟語がお似合いな出現の仕方だ。
 ただ地図を見て気になった事がある。俺は皆が集会をしている余所で、地図上を指でなぞった。




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