[携帯モード] [URL送信]
03-15


 
 
(此処は三丁目古書店近くの空き地。こっちは五番地の公園…裏辺り。向こうは隣町の高架線下…、か。裏道が近くにあるよな、此処)
 
 
 まさか、とは思うけど…、まさか、な。
 
 ジッと地図と睨めっこしていると、「ケイ」蓮さんが声を掛けてきた。顔を上げる前に、「何かあるのか」地図を覗き込み、硬い声で質問を飛ばしてくる。俺は間を置いて、ちょっと気になる事があってと答えを返す。
 すかさず教えて欲しいと蓮さん。どうやら浅倉さんのことで、事の把握に焦っているらしい。
 気持ちは分かるけど、あくまで可能性だ。安易にこれを鵜呑みされても困る。なにより、情報が足りない。楠本の情報が欲しいところだ。
  
 
「蓮さん、楠本ってフリー時代、いつも何処にいました?」


 彼の質問に答えず、質問を飛ばす俺。
 気にすることなく蓮さんは口答。「街を転々としていたらしいぜ」特定の場所にはいなかった、野良不良だったからな、と教えてくれる。
 チームにいた頃はいつもべったりと榊原に付いていたそうだけど、フリーだった頃はのらりくらり街を彷徨っていたそうな。それに一点に留まっているとうらみつらみを買った不良達に喧嘩を売られてしまい、それが面倒くさく、あっちこっち街を転々としていたそうだ。本人に直接聞いた事がある、と蓮さん。

 なるほど、相槌を打つ俺は少しばかり口を閉ざした。街を転々とね。……可能性は大きくなったな。
 
 もしも、俺の予想が当たっていたらこれはちょっとばかし厄介だぞ。あくまでまだ可能性の話だから、意見することはできないけど。もう少し情報が欲しい俺は、「もう少しだけ待ってください」時機が来たら蓮さんを呼んでヨウに物申すから、と頼む。
 不満気に、でも理解を示してくれる蓮さんは分かったとだけ返答してくれた。

 ごめんなさい、蓮さん。
 すぐにでも知りたいだろうに…、でもこういう事態だからこそ慎重に事を進めないといけないと思うから。だからもう少しだけ待っていて下さい。
 
 
 片隅でやり取りを交わしている間も、ヨウと涼さんは仲間達に指示を送っていた。 
 奇襲を掛けては、どこかへと隠れる楠本チームをこれ以上野放しにしておけない。できるだけ情報網を張って奴等の足跡を探り、畳み掛ける準備をする。と。
 地道なやり方だけどこれしか方法がない。なにせこっちは楠本情報が不足しているのだから。

 ただし、偵察・情報収集をするのは主に荒川チームが担当することになった。
 
 何故なら浅倉チームは“廃墟の住処”の件があるからだ。支配下に置いている商店街は、不良達の間では人気スポット。狙われやすいテリトリーだ。
 リーダーの浅倉さんが不在の今、噂を聞きつけた他のチームが強奪しないとも限らない。話を聞けば、一昨日も“廃墟の住処”は他のチームに狙われたらしい。楠本達とのいざこざを聞いて、隙を突こうとしたんだろう。 

 折角“エリア戦争”の勝者になって、その土地を手にしたんだ。絶対に手放して欲しくない。
 ヨウは浅倉さんの気持ち、チームの気持ちを汲んで、ちょい危険であろう偵察・情報収集を俺等チームが買って出ると提案。勿論、チームメートの承諾を得てだ。ということは? 俺もそれに参戦せねばならないわけで?
 
 うん…、泣きたくなったヨ。とつても泣きたくなったヨ。
 だぁああって、何度経験してもなれないんだよっ、こういった大々的な喧嘩はさ! 小規模も慣れないけどっ!
 
 
 俺の嘆き、しみったれた集会もそこそこの、早速行動を開始する。
 荒川チームに交じって、浅倉チームが偵察・情報収集組に参加。その中に蓮さんや桔平さんの姿があったけど、べつに驚きはしなかった。各々浅倉さんの舎弟だからな。テリトリーを守るより、こっちで情報を入手したいっていうのが気持ち的に上回ったんだろう。ヨウも気持ちを察して、当然のようにメンバーに加えていた。
 
 偵察組はなるべく手腕のある組が、情報収集組は非力組が担当することになった。
 特に情報網に長けている弥生、利二は念入りに情報を収集してくるよう、リーダーに頼まれていた。情報は戦力の要のひとつだからな。これまでの喧嘩で嫌ってほど、俺達はそれを知っている。

 些細なこと、くだらないこと、どんなことでもいいから徹底的に情報を提供して欲しいとリーダーは二人に指示していた。




[*前へ][次へ#]

15/32ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!