006
『ヘコむなって。まだ1ヶ月だぞー? そりゃ、俺ちゃまは一流ドラゴンだけどよぉ』
「自分で言うな。自分で」
『こういう時は萌えで補うんだぜ? 俺ちゃま、最近、ヘソ・チラ見バイにハマってる。シャツから見えるか見えないかの際どいヘソを見るだけで、萌えるんだぜ。ちなみに裸じゃダメだぜ。ヘソ・チラ見バイは、見えるか見えないかの際どいヘソを見るのが悶えるんだからな』
「俺は変態じゃねぇ……萌えるかっ」
『アルス……お前、カワイソーな奴だな』
「お前の頭の構造の方が、よっぽど可哀想だ」
怒鳴りたい気持ちを抑え、アルスはギュナッシュの書いていく内容を書き写していく。
小声で「可哀想な奴」と連呼しているラージャは、ふとベルトルの方を見た。
『アルス』
「んだよ」
『ベルトルの奴』
「あ? あいつが何だよ」
『ブリーフだと思う?それともトランクスだと思う?』
「そうだな。あいつは、意外とボンボンそうだから」
って……このクソドラゴン。
突拍子もなく変な質問してくるんじゃねぇ。乗っちまったじゃねえか。今、授業中だぞゴラァ。
しかも何が悲しくて野郎のパンツなんてモノをッ、ムカツク野郎のパンツなんてモノをッ、考えないとイケないんだよ。俺はまだ女の子の……俺も変態かよチクショウっ!
いや断じて違う。俺は違う。変態じゃない。
なって堪るか!
アルスはラージャの頭を羽根ペンで殴りつける。
そして次の瞬間、頭上からワザとらしい咳払いが聞こえる。
恐る恐る顔を上げれば、ニッコリと笑ってくるギュナッシュが腰に手を当てて立っていた。
「アルスくん。ラージャちゃん。今、何の時間?」
「あ、あー……授業中です」
「だよねぇ。じゃあ、僕のお話をよーく聞く時間だよね?」
「す、すみません」
『俺ちゃまの萌えの時間に、授業中も何もないぜ! 授業ごときで俺ちゃまの萌えフィーバーが止まるなら、世界はクソッタレだぜ!』
あーあーあー。
言っちまったよ、言い切っちまったよ、この変態ドラゴン。そしてお前がクソッタレだよ。
冷汗を流してアルスがラージャに溜息をつく。もう、怒る気力も無い。ギュナッシュも「店にいた時からそういう子だったね」と溜息。
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