007
ギュナッシュは元々教師ではない。
ドラゴンを専門に扱っているお店の店員。『ドラゴンブリーダ』ーと呼ばれる職業に就いている。
しかし、ドラゴンを扱う人が極端に少ない為、教師として派遣されて来た。
ラージャやナーガは、ギュナッシュのお店から買って来たドラゴンな為、ラージャの性格はギュナッシュもよーく知っている。深く溜息をついて、ギュナッシュは片手に持っていた教科書を閉じる。
「とにかく、48ページの問題をやっておいて下さい。僕は資料を取ってきますので」
授業中は静かに大人しくするように。
しっかりと釘を刺し、ギュナッシュは教室から出て行く。背を見送ったアルスはラージャを睨む。
「お前のせいで〜〜〜ッ」
『なんだよー。本当のことを言ったまでだぜ?』
「まあまあ。アルス。問題やっちゃいなよ」
微苦笑を浮かべて、フォルックがアルスに言う。
アルスはブツブツと文句を言いながら、指定された教科書のページを開いて問題を解き始める。
するとベルトルが鼻で笑ってくる。
「さすが三流だな。ドラゴン1匹も躾デキないのかよ」
「ッ、ウルセェ!」
『俺ちゃまを躾する? 俺ちゃまは今だって十分に素晴らしいドラゴンなんだぜ? これ以上、どこを躾するって?』
「馬鹿! お前は黙ってろって!」
「【マナ】もまともに送れないもんな」
「ッ……」
こいつ、イッチバン気にしてることをズケズケズケと。
皮肉ってくるベルトルを睨み付け、「俺のペースがある!」と怒鳴り教科書に無理やり目を向ける。問題に集中しようとしていたアルスに向かって、ベルトルがニヤリと勝ち誇ったように笑った。
「そういう奴ほど、落ちぶれる。いつまで此処に居れるか見物だな」
―――バンッ! ッ、ガッタン!
アルスが思い切り教科書を机に叩き付け、椅子を倒して立ち上がる。
あたふたとフォルックがアルスを宥めるが、アルスは完全に今の言葉にキレた。プッツリとキレた。
「確かにな。俺はお前やフォルックのように出来た奴じゃねえよ。けどな、俺のこと、何も知らない奴が好き勝手ほざくんじゃねえよ」
「へえ。努力でもしてるっていうのか?それで全く【マナ】を扱えないんじゃ、ただのお笑い種だ」
「ンだとッ」
「ふ、ふたりとも今は授業中だから。ギュナッシュ先生も大人しく待っとけって言ってたよっ」
『おおおおおおおっ落ち着くんだぎゃー』
2人に挟まれているフォルックとナーガが冷汗ダラダラ流しながら、懸命に仲裁に入る。
溜息ついてラージャがアルスに呆れた。
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