[携帯モード] [URL送信]
010


  

 申し出に、ジランダは瞠目した。
 

 蜥蜴のような舌をちろっとだしながら、どういう意味だと返す。
 「だからさ」自分が【マナ】を送るから、それを受け止めて【マカ】を作ってみるのだ。別にパートナー同士でなくとも、ドラゴンと使い手であれば可能な筈。授業でもそういったケースが度々あると習った。自分とジランダが組むことも出来るのだ。

 どーせベルトルは練習に付き合ってくれないだろうし、まずは自分で【マカ】の感覚を思い出せばいい。
 ただし、自分は不器用だから最大で三発までしか【マナ】を送ることができないが…、それでいいなら付き合うと提案。『しかし』そんなこと頼んで迷惑ではないか、引っ込み思案が出るジランダに微笑。
  
 
「俺等の間に迷惑も何もナシだぜ。パートナー同士じゃない、気兼ねない友達同士だろ? 迷惑掛けての友達だ。それに俺もちょっと興味があったしさ」

『アルスさま』


「成功したら次はベルトルで試してみればいいし、失敗してもしもジランダに怪我させちまったら、俺、あいつに頭下げてくるから。成功も失敗も半分ずつだって。それに俺はジランダには素質があるって信じてる。あのベルトルのパートナーしてるんだぜ? 超が付くほど礼儀正しいし、俺よか優等生だよ、ジランダは。これで終わって腐るなんて悔しいじゃんか。やってみようぜ、ジランダ」
 
 
 「な?」アルスから大きな励ましを受け、ジランダは前向きに物事を考えた。
 そして是非ともやってみたいと提案に乗る。まずはアルスの【マナ】を受け止め、【マカ】の感覚を思い出してみよう。次いでベルトルの【マナ】を受け止められるよう、努めてみよう。何事も焦らず、スランプは順々に克服していかなければ。

 早速、ジランダはアルスと共に演習で使われる水晶柱の前に立った。水晶柱、ジランダ、最後尾にアルス、と直列に並んで構える。
 克服しようと必要以上に身構えるジランダだが、「まずはリラックス」アルスが笑声を漏らした。

「そんなに身構えたら、こっちも緊張しちまう! 俺だって【マナ】の送り方は上手くないんだから…、超フルパワーが飛んでくると思うけど堪忍な」

 不思議と心の緊張が解けていく。
 頷くジランダの様子にアルスは「構え」、現段階で仮パートナーになっているドラゴンに命令。素早く呪文を唱え始める。
 

「“この声が聞こえるのならば、汝、その力を糧にするがよい。我が力は今この時により、血となり、糧となり、そなたの肉体の一部と化すであろう”」


 体内に流れてくるのは主人とは別の【マナ】のオーラ。
 
 主人の【マナ】を例えるならばうねる炎の塊だが、アルスの【マナ】はまるで雷雲のよう。荒々しい雷雲が己の中に凄まじい勢いで流れ込んでくる。フルパワーなのだろう、膨大な量の【マナ】が己の中に蓄積されていく。
 嗚呼、もしかしたら自爆するかもしれない。不安が脳裏を過ぎるが、アルスの言の葉が蘇る。成功も失敗も半分ずつだと。大丈夫だとジランダは自分に言い聞かせ、己の【ドラ・マナ】と混合させる。
 
 このまま何も出来ないと嘆き、腐り、涙を呑んで終わるなんて絶対嫌だ。後悔なんて絶対に嫌だ。
 ジランダの体が軽く青く発光を始めた。これは、今までにない状況。ラージャとアルスペアが見せた輝きに似ている。
   



[*前へ][次へ#]

11/19ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!