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009


  

「ジランダは自分に劣等感を抱いてるんだな。俺と一緒だ。俺も、こう見えて劣等感に苛んでるんだぜ? 俺、クラスで一番魔法技術が低いから…、ラージャに負担ばっか掛けてる。あいつ、何も言わないけどさ…、俺みたいなパートナーを選んじまって苦労してると思うぜ」

『そんなこと…』


「あるんだよ。俺とジランダが劣等生なら、ラージャとベルトルは優等生ってところだな。向こうは魔力や技術が高い。対して俺等は平々凡々。劣等感を抱いちまうってわけだ。俺はジランダのことを劣等生とは思わないけど、自分でそう思っちまってるんだろ? 俺も思ってた。
ドラゴン使いなんて不向きなんじゃないかって…、【マカ】を使いこなす前は毎日のように自問自答していたよ」


 でも、ラージャは、あいつは俺自身の能力に文句を言わない。

 不器用だの下手くそだの言うけど、俺自身の可能性を否定されたことはない。自分が選んだパートナーだから、そう言って俺を信じ続けてくれるんだ。劣等生の俺を、馬鹿みたいに信じてくれる。

 だから俺はそれに応えたい。【マカ】を使えるようになったのは、ラージャの信頼あってこそだと、俺は思ってる。
 使えてもまだまだ【マカ】は未熟だけどさ、あいつが俺を信じてくれる限り、俺は腐らず頑張れるんだ。
   
 
「俺が思うに、ジランダとベルトルの欠けてる部分はコミュニケーション。思ってることを互いに言えてないっていうかさ、ジランダ自身が萎縮しちまって向こうに気持ちが伝わってないっていうか。普段から気持ちを通わせておくって大事だと思うぜ、俺は。
技術面じゃ圧倒的に俺等に勝ってるんだ。ジランダはもっと自信を持っていいよ。きっと、言葉足らずなんだ。ジランダも、あの馬鹿も」
 

 恍惚にジランダはアルスを見つめ、助言してくれる彼に一笑。
 『優しいんですね』自分達は好敵手だというのに、こうもあっさりと助言をしてきてくれたり。気遣ってくれたり。優しくしてくれたり。普段あんなに主人と喧嘩しているというのに。

 するとアルスは笑声を漏らし、「好敵手の前にクラスメートだろ?」食べ終わったリンゴの芯を向こう草むらに投げ頭の後ろで腕を組む。


「ベルトルもジランダも、数少ないドラゴン使いのクラスメートだ。負けん気は勿論持ってるけどさ、お前等が腐ってたらやっぱ気になるわけだ。俺ってヤサシーだろ?」

『アルスさま…、ありがとうございます。少し、心が軽くなりました』

「理解してくれる奴がいる。それだけで劣等感って誤魔化せるもんだって。ベルトルが理解してくれるのがいっちゃん良いんだろうけど」


 あの馬鹿は腰が重石だし、プライドはお月様より高いし、口はめちゃくそ悪いし。
 
 本当だったならば、揃って【マカ】の練習をし、この苦難を二人三脚で乗り越えていくべきなのだが。
 個々人の問題としてあいつは捉えているし…、いや、もしかしたら分かっていながらも簡単に動けないのかもしれない。そういうところは優等生くんも不器用だと思う。そしてパートナードラゴンのジランダも、これまた不器用なのだ。
 

『明日以降の演習が恐怖です』


 また、主人の【マナ】を拒絶してしまうかもしれない。失望させてしまうかもしれない。嗚呼、もしかしたら自分には素質がないのかもしれない。
 シュンと身を小さくするジランダを流し目で見た後、一思案。ベルトルが練習に付き合ってくれる輩だったら、ジランダだってここまで苦悶することなかっただろうに。と、アルスは頭上に豆電球を点け、指を鳴らした。


「なぁ、素質があるかどうか、ちょっと俺で試してみよーぜ。ジランダ」

『え?』





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あきゅろす。
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