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011


  

 
「“声を受け止めよ、糧を肉体とせよ、血を生命に変えよ。我が力の名はマナ―!”」
 
 
 
 噛み締めるように最後の【マナ】を噛み締め、ジランダは地を蹴って飛行。爆ぜそうな気を力に変え、口を開いた。
 
 瞬間、青々とした光線が放たれ、水晶柱を貫通。間を置いて爆音が周囲に響いた。『ツっ!』「うわっと、ジランダ!」咽かえるような爆風に呑まれ、吹き飛ぶジランダの小さな体を追い駆け、アルスはスライディングでそれを受け止めた。
 「セーフ」アルスは荒い息遣いをそのままに、ジランダを抱え、その場で胡坐を掻いて身の安否を確認。


「大丈夫か? お前に何かあったら、俺がベルトルに怒られちまうから、遠慮なく言えよ」

『いいえ、助けて下さりありがとうございました。無事です』

「ならいいよ。それにしても…、ジランダすげぇ。見ろよ、あれ」


 アルスは前方を指差し、大きく息をつく。

 演習場の裏に設置されている水晶柱は、演習場に設置されているよりも二回り小さいせいか、粉々に砕け散っていた。それほど凄い威力を放ったということだ。
 瞠目するジランダはまさかそんな、とばかりに口をあんぐり。呆然と破片と化している水晶柱を見つめ、信じられない気持ちに浸っていた。
 「できたじゃん」アルスはジランダの体をゆっくりと撫で、ニッと綻んでみせる。


「ジランダはできる奴なんだよ。自分に自信がないだけで、本当はやれる奴なんだ」

『そんな、ベルトルさまの時だってこんなパワーには…じゃあ、相性がもしかして悪いとか』
 
「違うよ、ベルトルもジランダも欠けてるんだ。【マカ】に必要な材料がさ。それは一番簡単な材料で、一番必要な材料だと俺は思う。俺はその材料をラージャに貰っていた。だから威力のある【マカ】を生み出す事が出来る。ベルトルと乗り越えれば、俺と組んだ以上に凄い【マカ】が生み出せるって」

『そういうものでしょうか? ……アルスさま、ひとつ』


 「ん?」首を捻るアルスに、ジランダはおずおずと問い掛ける。


『私はベルトルさまに出逢った日からずっと、将来は“使える”ドラゴンと共に使い手となりたいと説かれていました。私はラージャと比べれば、随分劣ったドラゴンです。魔力も彼女に劣っていますし、要領も悪い。そんな私でも、ベルトルさまにとって使えるドラゴンになれるでしょうか?』


 もしも使えないドラゴンならば、自分の存在意義は失われてしまう。
 口に出して初めて分かる不安の源泉。自分は主人に出逢った当初から、選ばれたあの日から、怯えているのだ。使えないドラゴンだと言われることが。それによってイラナイと言われることが。

 捨てられてしまえば、自分にはもう生きる場所がない。
 
 重々分かっているから、ベルトルに改めてパートナーになって欲しいと言われた時は嬉しく、見合うドラゴンになろうと気持ちを引き締め、もっと主人に必要にされるようなドラゴンになりたいと切に願ってしまったのだ。
 心のどこかで、自分以上のドラゴンが現れたらどうしようと怯えている。
 
 ポンッ―。
 アルスに頭を撫でられ、ジランダは恐る恐る見上げた。彼はあどけない顔で笑っていた。まだ辛いのか息遣いが荒い。




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あきゅろす。
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