[携帯モード] [URL送信]

Main
3
※日下部視点です。


母屋に着いてすぐに、立ち尽くす少女の姿を見つけた。


確か志藤の婚約者である少女だ。名は…桜子、と言ったか?


「桜子!」

「…っ、」


蒼白な顔で佇んでいた少女は、弾かれたように振り返り、志藤の姿を見留めた瞬間、泣きそうに顔を歪める。


「静っ…!」


少女に駆け寄り、彼女を支えるように話掛ける志藤。

二人の緊迫した様子を見ながら、私は嫌な予感が拭えずにいた。


何故、一緒にいない?


少女と共に母屋に向かった筈の凛君の姿が見えない事が、私の中の焦燥を煽る。


「撫子ちゃんは?」

「まだ見つからないんだけど…っ、」


必死な少女の様子に、更に不安が増し、嫌な汗が手のひらに滲む。


「凛君が、」

「…りっちゃん、…?」


その名に、志藤の表情も強張った。


嫌な予感は、伝染する。


「……尚久さんを、追いかけて…」


その言葉は、最後まで聞いていられなかった。


頭が真っ白になる。





…ああ、何故嫌な予感ほど、良く当たるんだ。


.

[*前へ][次へ#]

9/132ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!