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※日下部視点です。
母屋に着いてすぐに、立ち尽くす少女の姿を見つけた。
確か志藤の婚約者である少女だ。名は…桜子、と言ったか?
「桜子!」
「…っ、」
蒼白な顔で佇んでいた少女は、弾かれたように振り返り、志藤の姿を見留めた瞬間、泣きそうに顔を歪める。
「静っ…!」
少女に駆け寄り、彼女を支えるように話掛ける志藤。
二人の緊迫した様子を見ながら、私は嫌な予感が拭えずにいた。
何故、一緒にいない?
少女と共に母屋に向かった筈の凛君の姿が見えない事が、私の中の焦燥を煽る。
「撫子ちゃんは?」
「まだ見つからないんだけど…っ、」
必死な少女の様子に、更に不安が増し、嫌な汗が手のひらに滲む。
「凛君が、」
「…りっちゃん、…?」
その名に、志藤の表情も強張った。
嫌な予感は、伝染する。
「……尚久さんを、追いかけて…」
その言葉は、最後まで聞いていられなかった。
頭が真っ白になる。
…ああ、何故嫌な予感ほど、良く当たるんだ。
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