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※日下部視点です。
「…っ、どっちだ!?」
「っ…!!」
突然志藤は声を荒げ、必死な様子で少女の両肩を掴んだ。
志藤の豹変ぶりに、少女はビクリと体を揺らす。
だが、先程までの余裕は、最早志藤には無く、少女の戸惑いに気遣う事も出来ずに、鋭い眼光で少女を見据え、言葉を重ねる。
「どっちに行ったんだ!?」
「…っ、あ、あっちよ…。」
気圧された様子で、それでも指差した方向へ、志藤は、間髪入れずに走りだした。
呆然とした少女を置き去りに、私もその背を追う。
「………っ、」
全速力で駆けて行く背中を見ながら、私は思う。
凛君は、志藤が、撫子という少女に惹かれている、と言っていた。
…だが、私にはそうは思えない。
どんな時でも、最後まで冷静さを欠かないコイツの姿を、私は何度も見て来た。
軽く適当に見える志藤は、冷静で冷徹な一面を持つ。
どんな窮地であっても、冷静さを保てる志藤をかって、暁良様は、コイツを副に据えた。
その志藤が、完全に取り乱している。
まだ何かあったと決まったわけではないのに。
なぁ、凛君。
私は、コイツが特別の位置に置いている唯一人が、
あの少女であるとは、どうしても思えないんだ。
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