Main 3 ※日下部視点です。 母屋に着いてすぐに、立ち尽くす少女の姿を見つけた。 確か志藤の婚約者である少女だ。名は…桜子、と言ったか? 「桜子!」 「…っ、」 蒼白な顔で佇んでいた少女は、弾かれたように振り返り、志藤の姿を見留めた瞬間、泣きそうに顔を歪める。 「静っ…!」 少女に駆け寄り、彼女を支えるように話掛ける志藤。 二人の緊迫した様子を見ながら、私は嫌な予感が拭えずにいた。 何故、一緒にいない? 少女と共に母屋に向かった筈の凛君の姿が見えない事が、私の中の焦燥を煽る。 「撫子ちゃんは?」 「まだ見つからないんだけど…っ、」 必死な少女の様子に、更に不安が増し、嫌な汗が手のひらに滲む。 「凛君が、」 「…りっちゃん、…?」 その名に、志藤の表情も強張った。 嫌な予感は、伝染する。 「……尚久さんを、追いかけて…」 その言葉は、最後まで聞いていられなかった。 頭が真っ白になる。 …ああ、何故嫌な予感ほど、良く当たるんだ。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |