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シスター&ブラザー!
その姉、気付かず。


「あぁー士郎くんと次郎を抱きしめて眠りたい…」

「気持ち悪いぞ、美咲」



シスター&ブラザー!




美咲が吹雪士郎にキャアキャア言ってる間に練習試合が始まった。
試合内容は、当たり前というのもなんだが、こちらが優性だ。

前半が終わって、3対0。



「相変わらず余裕ッスね!」

「まぁ…目的は慣れない土地での練習だ。だからといって手抜きは許さないぞ」


成神は「やっぱ厳しいッスね」と苦笑いをして、ドリンクを取りに行った。
みんな寒さにも慣れて、いつもどおりのプレーをするようになってきた。

そろそろ、いいかもしれないな。


「みんな、集まってくれ……って、美咲はどうした」

「なんか佐久間連れて、かまくらを見に行くって…」

「あのバカ…!もういい。
とりあえず後半は、前半よりも攻撃に専念しろ。チャンスがあればデスゾーンを決めていく。いいな?」

「「はい!」」

「俺は美咲達を迎えにいってくる。
残って、アップしておけ」


はぁ、と吐いた息が白くなって消える。
この寒い中、しかも試合中だぞ!一応!
選手を連れ回すし、相手チームの選手を可愛いだの、連れ帰りたいだの言うし…!



イライラしていると歩くのも速くなり、思ったよりも早く美咲の姿を見つけられた。




「見て見て!次郎ー可愛い雪うさぎよ」

「早く戻らないと鬼道さんに殺されるぞ」

「でもお姉ちゃんは、いつだって次郎が1番可愛いわ」

「……はいはい…」

「僕は美咲さんのが可愛いと思うよ」

「士郎くんたら…あなたの笑顔のほうが可愛いのに!」


…あ、あいつ…!
佐久間だけならまだしも、吹雪士郎まで!
もう我慢ならん!!


「美咲っ!!」

「げっ…私の至福の時を邪魔しに来たのね、鬼道!!」

「鬼道さん!俺は戻ろうって言ったんですよ?本当です!!」

「マネージャーが、選手を拘束するな!
それに、試合に来ているのに相手チームの選手まで巻き込むんじゃない!!」

「しかたないじゃない、可愛いんだから」


まるで俺が間違っているかのように、美咲は踏ん反り返って言い放つ。
どこまで弟中心ルールなんだ、お前は!


「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。
えと…帝国のキャプテンさんだよね…?
僕が案内するよって誘っちゃったのが悪いんだ。だからあまり怒らないであげて」


「だが…お前にも、迷惑かけただろう」

「僕は、美咲さんと居られて楽しかったし…それに嬉しかったから迷惑だなんて…」

「士郎くん…っ!ツンデレ次郎も好きだけど、優しい士郎くんも好きだわ…」

「え?ほんとう?嬉しいな。
でも、優しいのは美咲さんにだけだよ」

「士郎くん…」

「美咲さん」


なんだ、このイライラする雰囲気は。

俺だけじゃない、横に居る佐久間もなんだか落ち着かない様子で吹雪を睨んでいる。
そんな俺達をチラっと見て、楽しそうに一瞬笑みを見せた。その直後、吹雪は近付く美咲の肩を抱き寄せた。


「…士郎、くん?!」

「な、ななな…姉貴から離れろ!てめー!」

「え?どうして?」

「どうして、って…!」

「美咲さん、僕にこうされるの嫌?」

「嫌…じゃないけど、その…」

「じゃあ問題ないよね」


吹雪はまた不敵な笑みを見せ、今度は正面からぎゅっと美咲を抱きしめようとした。


バシッ!!


「美咲に、触るな!」



しまった…―、と思ったのは遅かった。
俺の右手は吹雪を殴ってヒリヒリと痛い。
何をしてしまったのか、自分でも分からない。「嫌だ」と思ったら、気付かないうちに身体が動いていた。
倒れかけた美咲を支えた佐久間も、驚いた表情で俺を見上げる。


「…酷いことするな、帝国のキャプテンさんは」

「な、殴ったことは謝る。すまなかった…
だが、練習試合とはいえ、うちのマネージャーに対して、気持ちを揺るがすような行為をするのは許せない」

「ふーん…まぁ、僕もいきなりやりすぎたし…ごめんね」


手を差し出して、立ち上がらせると吹雪は俺に囁いた。


「試合抜きで、美咲さん個人を口説くなら、問題はないってことだよね?」


またカッとなって、動きそうになった右手を押さえこみ、得意げな笑みで俺を見る吹雪に、美咲に聞こえないように小さい声で告げた。


「俺個人としては、断固拒否だ。
美咲は渡さない」

「そう。…じゃあ、お互いがんばろうね」

「ふん、今は試合中だぞ。俺はどちらも負けるつもりはないがな」


僕もだよ、と言い残して、ベンチへと去っていく吹雪の背中を見送り、美咲たちのほうへ振り向くと二人は同じタイミングでビクッと肩を震わせた。


「何をしている。試合に戻るぞ」

「あ、あんた、士郎くんの顔殴って…あんなに可愛いのに…っ」

「俺はもっと可愛いものを守っただけだ」

「…はぁ?士郎くんより可愛いもの?」

「鬼道さん!そ、それって……つまり…」


佐久間姉弟は二人で、顔を見合わせて、俺の方へ、ずいっと寄ってきた。



「「次郎(俺)!?」」


「どうしてそうなるんだ!!」



その姉、気付かず。
(でも、次郎以外に可愛い子なんて私知らないわよ?)
(もうお前なんか知らん!!)





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