シスター&ブラザー!
その姉、失神す。
「今日の夕飯はカニよ!士郎くんからもらったの」
美咲は笑顔で吹雪の名前を呼ぶものだから、ぴくりと眉が動いた。
許せん。
「辺見、惚れ薬かもしれない。毒味してこい」
「いや…鬼道さん、あれまだ動いてるんですけど…!?」
「いいから行け!」
「いや、いやあああ!俺の額がカニに挟まれデストロイー!」
シスター&ブラザー!
練習試合も終わり、吹雪たちと別れ、俺たちはホテルへと帰った。反省会もかねて、今はロビーを貸し切り集まっている。
「あらあら、洞面くん寝ちゃったみたい…可愛いわ」
「こっちもだな、たく締まりがないやつらだ」
ソファーに寝てしまった洞面や崎山たちに毛布をかけて、起きてる奴らで順番に部屋に運んでいく。
「さ、カニも食べたし。
私も部屋にいこうかな」
「俺も一緒に行く」
「何よ、また私と次郎の邪魔をする気なの!?」
「思い込みが激しい女だな」
美咲はぎゃあぎゃあと反論してきたが、周りにとめられて俺への攻撃をやめた。
「それにしても、なんだかすごい荷物だな」
「女は色々あるの!デリカシーがないと嫌われるわよ」
なんだか重そうな荷物を引きずる美咲は歯をくいしばりながら、歩き出した。
素直に助けてと言えば、持ってやるのに。
「ほら、貸せ」
「な…なによ。気持ち悪い」
「そうか、じゃあ離すぞ」
「いや、ちょっと!やめて!」
いたずらに手を離すように見せれば慌てる姿に思わず、笑みがこぼれて、美咲は楽しそうな俺を見てまた頬を膨らませた。
「鬼道、最近よく笑うようになったな」
「あぁ……」
「あーやっぱりお姉ちゃんが男と仲良くしてるのは気に食わないのか」
「何言ってんだ!そんなんじゃない!ただ……」
「ただ?」
「俺も鬼道さんに優しく荷物をもってもらいたい」
「……やっぱり姉弟だな。相手への執着が気持ち悪い」
源田の呟きは、佐久間に聞こえることはなく、2人もロビーをあとにした。
*
「そういえば、お前何号室だ?」
「202号室よ、正面の部屋」
「……」
「どうしたのよ、黙って」
「忘れていたが、佐久間と部屋を交換したということは…美咲と同室ということか」
美咲は一時停止したように動きをぱたりと止めて、「次郎ーー!」と泣き叫んだ。
その姉、失神す。
(朝は起こさないからな)
(起きられるわよ!)
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