02
よくある、からん、とかいう音じゃなくて、小さく、ちりん、という音がして。
ドキドキしながらゆっくりと中に入ると、目の前には五人分のイスがあるカウンター、その向かいが調理場ってかキッチンっぽい。
右側には四人席がふたつと二人席がひとつ。左側には観葉植物と、シンプルで綺麗なアンティークの食器棚。
ざっと見ても15人が限界っぽい、小さい喫茶店。
穏やかに流れる大きすぎない音楽と、漂うコーヒーの香りと、さっき路地で気付いた甘い香り。
だけどなぜか、従業員が見当たらない。
なんで。
一番奥の四人席に、おじいさんがひとりで新聞を読みながらコーヒーを飲んでるのに気付いて、また悩む。
従業員がいない。
どうしよう。声をかけるべきか?
なんて考えていたら。カウンターの向こう、かすかに見えた段差に、薄いカーテンで仕切られている向こう側。
そこから聞こえた、声。
「ちょ───ちゃった───」
「───っつったろ───」
「オイ───なに───てんだ!」
ぱたぱたと音がして、ドキッとする。
どどどどうしよう。なんて言おう。
自分でも珍しく焦ってて。
ふわりとカーテンが揺れて現れた人物に、一瞬言葉を忘れた。
「───…れ?…あ、いらっしゃいませ」
「……」
カウンター前に出てきた従業員は焦ったように微笑して。
ふわふわとしたよくある茶髪に、あまり見ないかなり色素の薄い目。
小綺麗っていうのか、そんな感じで、男のわりには若干小柄に見えた。俺より小さいかも。
ぽかん、としてる様子で俺を見てる。
だって俺、声が出ない。
「なんだ、じいさん帰ったか」
「ちょ、だから話聞けって言ってんじゃないっスか」
沈黙を破ったのは、さっき小柄な従業員が出てきた所から現れた二人の従業員で。
その姿を見た瞬間、俺は一瞬思考が停止した。
グレーの髪の見たことないくらいの容姿の人と。
なぜか半ギレしてる金髪ポニーテールの人。
どっちもかっこ良すぎる。
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