甘い匂いに誘われました。‐01
「んんッ、終わったー」
「帰ろっか」
「てか諒ちん、授業殆ど寝てたっしょ」
「え?なんのこと?」
そんなこんなで今日も終了。
部活は帰宅部だからなし。
ああ、甘いもん食べたい。めっちゃ甘いもん食いたいんだけど!
「コンビニスイーツが恋しくなったから、あの曲がり角までな!」
「またか」
「いつもだよ、多貴」
いつも通りに三人で、いつも通りの会話をしながら教室を出る。
ま、終始瀬戸からの視線があったけど。
下駄箱で靴を履きかえて。
「結局、諒の後ろはなんだったの?」
「さあ?」
休み時間に話かけられることもなく、ただ見ていただけっぽい瀬戸。
言葉にしてくんないと分かんねぇよ俺は。
テレパシー使えるほど超人じゃねぇし。
気になるけどさ。まあ、言葉に出来ない感情ってのがあんのかもしんねーけど。
「ほいじゃ、また明日なー」
「おーう」
「またね」
ラブラブカップルと別れて、お気に入りだったりするコンビニへ。
新作出すの早いから好き。結構種類あるし。
なんて考えながら、コンビニへの近道になる短い路地に入った時だった。
ふわり、と甘い香りがして。
建物の間だからどっちかからしてんのかと見てみても、そうじゃないっぽくて。
気になって、香りを意識しつつ路地から出たら。
視界の端に、小さな喫茶店らしき建物が入って来た。
アンティーク風の落ち着いた外観と、シックな扉の両脇には花壇があって、綺麗な花が咲いている。
夕方で静かなその空間に佇むその店は、営業してんのか分からない。
けれども甘い香りは強まって、恐る恐る近付いてみた。
扉には、店の名前なのかゴシック体で『R』とだけあって。
札もなにも出てないけど明かりが点いていて、気になって気になって仕方なくて、気付いたら扉のノブを掴んでいた。
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