02
「なぁ、お前仁科だろ?」
「ちょっと顔貸せよ」
え?顔って貸せなくね?
外せねぇし。うん、まあ、言わないけど。めんどくせっつの。
運悪く弁当を忘れて売店に向かってた途中。運悪く変な輩に捕まった。なに、今日厄日?
顔貸せ、なんて言われてとりあえず付いて行っちゃう俺。まあ、腕捕まれちゃったからついてくしかないんだけど。
つうか、俺まだ昼飯食ってねーんだけど。昼飯奢らせたろか。
ぐったりしながらついていけば、そこは屋上。あーりーきーたーりー…。
「───俺らもさぁ、やられっぱなしじゃーさぁ、プライド?ちょー傷付くんだよね」
「つーわけで、ちょっと痛い目見ろよ」
「恨むんなら幼なじみを恨めよー」
ひとこと。話が読めん!
ゲラゲラと笑う、目の前の数人。
きもいきもい。そういう笑いって男前がやるから絵になると思うんだよ。
例えば、そう、多貴とか、ね。
つーか、さっき廊下じゃ三人だったのに増えてる。あらかじめ屋上に居たっぽいな。
学年でネクタイの色が変わるから、色からして三年。
いち、にー、さん、しー、ごー、ろく。ガタイの良い三年が、六人。部活なにやってんの?
そして、見覚えのある一番手前の先輩。
「ぼけっとしてんじゃねー、よっ!」
ヒュッ、と風を切る音に、向かって来る拳。けど、なにかを思い出しかけて避けながら考え続行。
そーいや、一年の終わり、つい最近だけど、伊織が男子生徒集団に拉致られて犯されそうになった事件があった。
それは伊織が第一な多貴が全員ぶっ飛ばして、未遂で事なきを終えたんだけど。
もしかして。
「っ、ちょこまかと…!」
なんもしてない俺に集団リンチを仕掛ける事に対して考え中だから、とりあえず拳はスルー。
こいつらアレか、あの時の。
多貴にあっさり倒された腹いせに、幼なじみで見た目貧弱らしい俺に白羽の矢が向いたってこと?
うわぁ。
- ガッ
「ったー…」
答えを見つけたから、避けるのをやめて拳を頬に受けた。
まともに食らったから痛い。咥内を切ったらしく、じんわりと鉄の味がした。
「うわ、見たまんま弱いとかありえねー」
げらげら笑う声。
やっと当たった一発でそこまで喜ぶとか、ありえねー。
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