[携帯モード] [URL送信]
03
 


 八つ当たりを黙って受け入れるつもりも、やられっぱなしでいるつもりはない。
 そんで、プライドがないわけじゃない。

 なんの為にあの人が俺に喧嘩の仕方を教えたと思ってんだ。
 こんなもんでやられてたら、俺、ドS属性のあの人に散々弄られっから。
 それは勘弁。



 咥内に溜まった血を吐き出して、口端に付いた血を指で拭いながら顔をあげる。
 思わず、口端が上がった。
 それを見た真ん前にいる先輩の目が見開かれるのを、見て。


「───流石にこんなんばっかだとウザイんで、見せしめにさせてくださいねー」


 言いながら今度ははっきりと、にんまりと笑みを浮かべ、足を振り上げた。










「…っはー…、やっぱキッツー…」


 ガシャッ、と豪快に音を立ててフェンスを背もたれに座り込む。
 背も高くてガタイの良い三年六人相手じゃ、やっぱキツいな。
 最近平和だったから尚更、鈍ってんのかも。平和主義者な俺からすりゃ、悪くないんだけど。
 殴られた腹とか顔とか、蹴られた足とかすんげー痛いんだけど。


 あー…。


「ちょー甘いもん食いてー」


 ふぅ、と息を吐いて立ち上がる。

 目線は、貯水庫みたいなもんのその上。
 さっきちらっと影が見えた気がしたんだよな。
 なんて思いながら見てたら。


「……えー、…なんで」


 そこから現れたのは、同じクラスでしかも俺の後ろの席の学校内で有名な不良、確か、瀬戸。
 下の名前は忘れた。
 話したことないし、多分。素直にびっくりしたよ。

 だるそうな顔をした瀬戸の目は鋭い。


「………昼寝」


 ふつーに答えてくれた。
 学校内で廊下歩けば勝手に道が出来るくらい、生徒は近寄らないし話しかけないし、先生すら控えめなくらい恐れられてるから、どんなやつかと思えば。

 いや。
 今そんなヤツの目の前にいるんだけども。ぶっちゃけ興味なさすぎて眼中になかった。
 ごめん、瀬戸。


 後頭部を掻きながら、軽い身のこなしでそこから降りて来る。
 結構高さあるんだけど、軽々しいなオイ。
 ポケットに手を突っ込んだまま近付いて来る瀬戸の視線は、倒れている先輩で。


 気になるのか。
 もしかして一部始終見てた、とか?それだったら助けてくれてもよくね?
 たち悪っ!


 


[*][#]

8/40ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!