出会い、微妙。
「つか今日全部教室じゃん」
「今更」
「多貴、時間割持ってるか?」
授業中。
ぽつりと呟いた多貴の一言に、伊織とほぼ同時に突っ込んだ。
月曜は体育なし、化学実験なしの、机にかじりつく、とはこのこと、と言わんばかりの内容。
動くのが好きな多貴にゃ、地獄らしい。
「北条、お前やる気あるか?」
「アリマセン!」
現文の担任がイイ笑顔で、横向きの多貴に投げかければ、にこやかにイイ返事をした多貴。
うん、まあ、チョーク飛んだよね。
多貴は避けるけど。
ついでに後ろの俺も避けるけど。とばっちりは嫌だし。
「そこは一応、あります!っつっとけ」
「あります!」
この学校の教師は色々と適当だ。
一年の頃は、私立なのにってびっくりしたけど、今は慣れたもんだ。
「……馬鹿二人」
「そう言ってやるな、伊織」
そーいや俺、昼飯売店で買わねぇと。
早くも今や昼休みの前、四限目の授業中、頬杖をつきながらぼんやりと思い出すのは、従姉が忘れた弁当の代わり。
お握り、サンドイッチ、惣菜パン。
ううん、悩む。行ってから決めよ。
「来週小テストあるから、よく復習しておいて下さい」
小テスト。
抜き打ちじゃないけど、来週っていうアバウトな感じが不安だ。
なんせ英語は、週三で時間割に組み込まれてるんだから。
「……死んだ。俺はもう死んだ」
「うっさい多貴」
前の席でうなだれてる多貴。
見もしないで突っ込んだ伊織。
なにこのカップル。多貴は苦手科目が多いからなぁ。
俺は特にリアクションもなく。
授業終了のチャイムが鳴ると同時にざわめき出す教室。
「わり、俺、弁当忘れたから売店行ってくる」
「珍しいね」
「いってらー」
机を寄せてた伊織が意外そうな顔をしつつも手を降る。
多貴は伊織お手製の弁当があるから、日頃から持ってきてないんだけど。
くっそ羨ましい。
教室が出て、三階から二階へ続く階段を下りる手間で、目の前に見知らぬ男子生徒数人が立ち塞がった。思わず、眉間にシワを寄せた。
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