白と黒
青き炎の勇者(前編)
その頃アリアは二階部分まで差し掛かっていた。
「あ、あと、少し!」
下の窓のさんに脚が届かず戸惑っているときだ。
もう、腕の力も限界で少しずつ窓のさんから手がずれていく。
「と、届いた!!」
ふとしたその時だ。
手元が外れアリアは地面に突き落とされる。
ドサ!!!
「痛!!」
あまり怪我はしなかったものの、もしも布団がなかったら大ケガをしてしまっていただろう。
だがそんなこともお構いなしにアリアは門に向かって走り出した。
(確かめたい!どうしても!)
門番もちょうど中に来客を誘導していたためそちらに気をとられアリアに気づかなかった。
アリアは門を走り抜けると一気に森まで休むことなく走り続けた。
同時にデーゼはアリアの部屋へと入っていた。
ノックをしても反応がないため仕方なく合鍵を使って部屋へと入ったが中には誰もおらず、大きな窓が一ヶ所空いたままで、カーテンが風で揺らめいていた。
「そ、そんな。」
デーゼもすぐさま走り出した。
その頃森の家ではハリスがいつものように薪を割っていた。
「ふー、休憩するか…。」
ハリスが斧をおき、振り替えると同時にアリアが勢いよく抱きつく。
「は、はーちゃん!!」
「うわ!何だ?!お前また来たのか?!」
勢いよく抱きつかれ、後ろへと反動で後ずさりやするが、どうやらいつもと反応がおかしい…。
「…な、どうしたんだよ。」
「はーちゃん!私!聞きたいことがあるの!」
「え?!」
アリアはお構いなしにハリスへと顔を近づける。
「な!?…なんだよ。」
その瞳に涙をためた顔を見ると何も言えずにとりあえず話を聞くことに。
「はーちゃんは私とお友だちだよね?お友だちよね?」
「はぁ!?」
「それは…ない。」
ハリスが返事を返そうとした時だ。
頭上から響き渡る声に二人は顔をあげる。
すると、空に浮遊していたのは藍色の髪の毛で毛先に紫かかった長い髪を腰下まで伸ばしたスラッとした女性が浮遊している氷の上に立っていた。
彼女は氷を消すと地上に何事もなく降り立った。
「だ、誰?」
アリアが疑問符を浮かべているとその冷たい視線に耐えられなくなり目をそらす。
「ふっ!…女王の娘と聞いていたが呆れたものだ、まさかこんなおままごとか…。」
「お前…なんだよ…。」
横にいたハリスは女を睨み付ける。
だが女はどうでもいいかのように振る舞い、アリアを一点に見つめる。
「お前には友達は出来ない…何故か教えてやろうか?」
「え…。」
「今……ここで
死ぬからだ。」
女はそういうとアリアに向かって氷の剣を振りかざす。
「ホーリーフィアンマ!!」
「聖 火!!」
その声と同時に女の氷の剣は青い炎に溶かされる。
「チッ!誰だ!?」
アリアも聞いたことのあるような声に驚き、後ろを振り向く。
そこには青い炎を身にまとったデーゼの姿があった。
「デーゼ…もしかして…
黒魔導師だったの?」
デーゼの右手のバンダナは外されていた。
「やれやれ、どいつもこいつも…あきれるね…この国の者は…。」
女も自分の右手を見ながらデーゼを睨み付ける。
その光景を木々の隙間から一人の女性が誰にも気づかれないように眺めている。
「んー、この世界はやはり素晴らしいわね♪」
そう言うと彼女は満面な笑みを浮かべた。
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