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白と黒
青き炎の勇者(後編)

「…さて、どうなるのかしら?」

木々の隙間に隠れている女性は四人を見下ろす。



「デーゼ!…あなた…もしかして。」

アリアが驚いた表情をすると、デーゼは口を開く。

「お嬢様…私は生まれつき黒魔導師です、今まで騙してすみませんでした。」

あまりの突然の告白にアリアは戸惑いを見せることはない。

「ううん、すっごくカッコいいよ!!ありがとう!!」

そういいながらアリアはにこりと笑う。

デーゼはその笑顔を見ると改めて女の方へ向き直す。

「貴方は誰!…何が目的だ!」

「…私は貴方に喧嘩を売りに来たわけではないわ、私の目当ては女王の娘よ…貴方に関係ないでしょ?」

女はアリアを睨むとデーゼに向き直す。

だが、あまりにも睨み付けるデーゼを見て、女は溜め息をつき名乗る。

「私は黒の国第一特攻部隊隊長、瀬津螺、そこにいる女王の娘を殺しに来た…これで良いか?」

「ならなおさら、私が止めるわ…。」

「やれやれ、めんどくさいね、貴方は私たちの味方だろう?なぜ白魔導師の味方をする…。」

瀬津螺は腕を組み呆れ顔をすると。また溜め息をつき、にらんでくるデーゼに睨み返す。

「私はお城に使えるメイド…貴方の好きにはさせない」

戦闘体制に入るデーゼに瀬津螺は溜め息をして口笛を吹く。

ピーーーー!

すると、何処からともなく黒い烏が瀬津螺の横に降り立ち、背中に乗ると何も言わずその場をあとにした。

「…なんだったんだ…アイツ。」

ハリスは小さくなる黒い影を睨み付ける。

「デーゼ!!ありがとう!」

デーゼはすぐ右手にバンダナをすると、だきついてきたアリアを優しく撫でる。

「怪我はないですか?」

「うん!でも!すっごくかっこよかったよ!」

その時、急にどこからか拍手が鳴り響く。

パチパチパチパチ!

三人は音の元凶をたどるように辺りを見回す。

すると、隠れていた女性が現れる。

フワリと降り立つその女性は先程の女性とは一風変わり穏やかそうににこやかに三人へ近づく。

クリーム色の髪に毛先が内側にカールし、右目を密網をした前髪で隠している。

きれいな緑色のすんだ瞳の女性だった。

だが、警戒心を解こうとしない三人にあまり近づかないように距離を置くと話し出す。

「そんなに警戒しなくても良いのよ?…私は貴方達を襲ったりしないわ♪」

にこにことアリアに近づき右手を差し出す。

「さっきはごめんなさいね、瀬津螺…も悪気は無いのよ?許してね。」

(どう考えても殺気バリバリだったけど!?)
と、脇にいた二人は内心突っ込むが、その女性のおっとりとした性格に少しだけ緊張感が緩む。

いつまでたっても手を握ってくれないアリアに一先ず手を下げ何やら考える。

「んー、あ!自己や紹介ね♪私は黒の国第二特攻部隊隊長…カタルシスよ?かといって、貴方を攻めはしないわ♪よろしくね♪アリアさん♪はい、握手♪」

アリアは出された右手に左手を恐る恐る差し出し握手を交わす。

「よ、よろしく…。」

「そんなに緊張しなくても良いのよ?何か聞きたいことがあったら言ってね♪」

「は、はい…。」

「んー、まー、でも、いきなりって訳にもいかないわよね?アリアちゃんが困ってしまうから…そうね、また今度会いましょう?今日のところは帰るわね?」

カタルシスはそう言うと持っていた杖をかざす。

すると、杖はホウキに早変わりし、その上に横座りするとそのまま宙へ浮き、立ち去っていった。

「…なんなのでしょうか…あの人は…。」

「んー。」

「とにかく!お嬢様!すぐに戻って女王様に御報告しなければ!さぁ、戻りましょう!!」

「え!でも…はーちゃん…。」

デーゼはハリスを睨むと、歯を食い縛る。

「…行けよ…もう、来るなよ…。」

ハリスはデーゼから視線を外し後ろに向くと斧を片付けて家へと入っていく。

「ま、待って!聞きたいことが!」

アリアは必死に引き留めるが声は届かない。

「さー、今日はもう、行きましょう。」

アリアは渋々デーゼに着いていくことにした。


その光景を一羽の黒い烏が見ていて、誰も居なくなったのを見計らい飛び立った。

烏は物凄い早さで飛んでいきあっという間に黒の国へとたどり着く。

一羽の烏がある一室の部屋の硝子をこつこつとくちばしで叩く。

がらりと開けられたその窓にはカタルシスがいた。

「あら♪お帰り♪どうだった?」

烏はカタルシスの肩に乗ると目を赤く光らせた。

カタルシスも目を閉じる。

「…そう、うーん、まだまだね…でも面白いわ♪これからどうなるのかしら?フフ♪」

クスリと笑うカタルシスは何やら楽しそうに思えた。

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あきゅろす。
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