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白と黒
デーゼの記憶
彼の事を知ると、嫌でも思い出す。
…何年も前、あの日はとても晴れて雲一つなかった。




私はいつものようにお母さんと朝御飯を作り、お父さんを起こしに行ったけれど、お父さんは珍しく先に起きて身支度を済ませていた。

そう、…あの地獄のような日…。

あの日はそんなちょっと変わった朝だった。

私の家系は白魔法の方が強く、私も人前では黒魔法など使ったことがなかった。
が、れっきとした黒魔導師だ。
母親は黒魔法を得意とし、父親は白魔法も黒魔法もイマイチ…。

とっても楽しい今までの生活…のはずだったが父親の一言で全ては変わる。

「今日は水が戻ってくるみたいだからな♪父さん行ってみようと思うんだ!二人もいくか!?」




そう。
その日は今までの干からび、砂漠化となってしまった大地に再び水を戻すと言う記念すべき日で、町中お祭り状態だ。

当然私たちも行くことになり、ご飯を済ませると、早々と支度をし、家を出た。

森を抜けた後の砂漠と化した荒れ地を見ると…今までそこにあった森と湖が嘘のようだ。

私たちは出るのも遅かったため一番最後の列になってしまい、よく見えない。

するとお父さんは浮遊して私を抱っこして見せてくれた。

いよいよ始まる。

白魔導師の指揮者であろう人が手を挙げると、周りにいた人たちも一斉に手をかざし、呪文を唱える。

そして、そのあと、黒魔導師たちも、手をかざし呪文をとなえはじめる。

暫くすると空に亀裂が入り、次元の歪みができる。

そこから大量の水が出てきて辺りにいた観客達は皆避けながら喜びの声をあげる。

だが、そのときだ。





それは起こってしまった。

今まで水が出ていた亀裂からピタリと水が出てこなくなった。

急な異変に…皆が騒然とする。

「お父さん…もう終わりなの?」

私もお父さんを見て、そういうと父は…亀裂をジーっと見て、顔を青ざめた。

「な、なんなんだ…あれは…!!」

その声と顔色に嫌な予感を巡らせながら私は恐る恐る…亀裂の方を見る。

そこには亀裂から頭を覗かせる今まで見たことのない恐ろしいモンスターが皆を睨み付けていた。


「…い、いや!!!」

私が小声でそういうのと同時に一気に皆が走りだし下は混乱状態だ。

亀裂からは次々とモンスターがわき出て人々を襲った。

向こうでは数多くの兵士達が魔法で戦っているが追い付けない。

「お、お母さんは!?お父さん!」

「!!分からない!どこに行ったか、人か多すぎて見えないんだ!!」

「そんなぁ。」

私と父親は必死になって探した、でも、どこにも見つからない。

あせる気持ちは募るばかり。

そのうち人々は左右の町へと別れ逃げていった。

「俺たちも逃げよう!母さんはきっともう、帰ってるんだ!」

「で、でも!」

「大丈夫だから!!」

父親の必死の説得に私は頷きおぶられながら家へと無事に到着した。

家へついて勢いよく扉を開けるが、母の姿は…どこにもなかった。

それから、何回もモンスターが町を攻めてきた。

お父さんは勇敢に戦い、いつも無事に帰ってきてくれた。

町にはモンスターがこれないように辺りを見えない壁で防御し、町の復興も始まった。


お母さんはいつまでたっても帰ってこなかった。

内心わかってたのに…もう、この世にはいないって。

そんな復興が続くある日、父親が血相を変えて、家に戻ってきた。

何か紙を持っている。

私はどうしたのか聞くと、まるでこの世の終わりのような顔をして私を抱きしめた。

「デーゼ!!ごめんなぁ、父さんが…父さんが情けないばかりに!!」

「え…。」

すると、父親は涙をふき、私にひきっった笑顔をみせて、話し出す。


「デーゼ…お前は黒魔法を皆の前で使ったことがない…だから、大丈夫だ…いいな、お前は白魔導師なんだ!白魔導師として、生きるんだ!お前は絶対…俺が守るからな…。」

「えぇ?、お父…さん?」

そういうと父親は私の頭を撫でて、家から出ていった。


そのあと、父親は帰ってこなかった。

あとから聞いた話だが…砂漠で闘っていた最中大ケガをして帰れなくなったらしい…。
そして、そのまま。





辺りの人もおかしい。

黒魔導師を殺せとか、何かにとりつかれたように言っている。




そういえばある日一人の女の子が訪ねてきたなー。


名前は…エイミ?だったかなー。
彼女の胸には小さな赤子が抱かれて、スヤスヤと寝息をたてていた。

ボロボロの服を着て、「食べ物を分けてください…。」って言ったから食べ物を出そうとしたら、隣の人に怒られた事もあった。

黒魔導師だったんだろう。

彼女はそういわれると、一礼し森の方へと入っていった。

私もそうなりたくない…。

その一心で父が死ぬ前にくれた魔法道具を握りしめる。

私はそれを右手にくくると黒魔法を封印した。



そのあと、私はまんまとなりすまし、城のメイドとして働き始めた。







でも。

これで本当に良かったのだろうか?

あの赤子は…どうなったんだろう?

あの女の人はどうなったんだろう?





なんで…私だけなに不自由なく生きてるの?

そんな思考回路が永遠にループするなか、私は母の言葉を思い出す。



「この世にね…必要のない人なんて一人もいないの♪お父さんも皆からは落ちこぼれって言われてるけど、私はそうとは思わないわ♪だって、お父さんはお父さんでしょ?」


その言葉が…






私を突き動かす。


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