白と黒 気持ち それから何週間か経ち、アリアもやっとお城の中は自由に歩けるようになった。 自分の部屋からは出てもいいが、外へはメイドとではないと出られない。 「…ねぇ、なんで森にいっちゃダメなの?」 アリアは何度もデーゼにそういうが、答えは変わらない。 「お嬢様?毎日本を読んでもらってるでは無いですか、女王様が止めるのはアリア様を大切にしているからですよ?」 「…。」 今頃、あの子はどうしてるんだろう…。 初めてできた友達…。 なのにこんなことになってしまうなんて。 アリアの胸の中は複雑だった。 「せっかくできたお友達なのに…」 アリアが小声でそう言ったときだ。 急にデーゼが顔色を変える。 「お友だちではありません!出来るわけがございません。」 「え?!」 アリアも急なデーゼの反応に暫し驚くがデーゼは頭を下げすぐに修正する。 「も、申し訳ございません…ムキになりすぎました。」 「…お友だちはできるよ…だって、お友だちになろうって約束したもん!」 「…!お待ちください!」 アリアは部屋に勢いよく入り、ドアを閉めると鍵を掛けた。 中からはすすり泣く声が微かに聞こえる。 デーゼは扉の前で頭を抱え、自分の右手を見つめる。 デーゼは右手にバンダナをくくっているがそれを見つめ、ため息を一つ吐く。 「…どうして…今頃になって…こんなことに…。」 デーゼは右腕を握ると、なにも言わずアリアの部屋を後にした。 アリアはその間布団を窓の外へと落としていた。 「確かめないと!!…このままじゃ…。」 アリアの部屋は城の四階部分。 落ちればただではすまないだろう。 アリアは布団を落とし、位置を確認すると窓に股がり、窓のさんに足を掛け慎重に降りる。 どうしても確かめたいことがある。 ただそれだけを思い、気づかれないように慎重に足を運ぶ。 そのしぐさを遠目から一匹の黒い鳥が見ていた。 一方デーゼはそんなことを知るよしもなく、休憩室へ入っていた。 休憩室へはたくさんの本が並び、ソファーがいくつもおいてある広い部屋だが、デーゼはそこにポツンと一人で座り込んでいた。 デーゼも複雑な気持ちで一杯だった。 どう説明していいかわからないが。 デーゼは扉の鍵を閉め、周りのカーテンも閉めきり、誰もいないことを確認すると、バンダナをほどく。 小さく呪文を唱えると、デーゼの右手からは炎が出ていた。 …そう。 デーゼは黒魔導師だったのだ。 バンダナは普段技を出せなくするための魔法道具だった。 デーゼは自分の右手の上に浮遊する炎を見て、やはり思い出す。 あの少年も…きっと辛かっただろう。 でも、私はお嬢様を守らなくてはいけない身。 だから全て否定する。 でも、彼を否定することは… いわゆる自分を否定している事になる。 デーゼは燃える炎を消すと、急いでバンダナを腕に絞めた。 「お母様…私…どうしたらいいでしょうか?」 デーゼはため息をつき、困り果てていた。 [*前へ][次へ#] |