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目は覚めていても、脳の方は覚醒してないらしく、どうにも頭も体も重い。寝不足もあるんだろうが、たまりにたまった疲労が一気に出たようで、仕事どころか動きたくもねぇ始末だ。
───週末で良かった。

ふと携帯を見れば、不在知らせの光が目に送られてきて、開いてみれば田中からの着信と、覚えのねぇアドレスのメールが一通。
一件はどうでもいいんだが、覚えのねぇそれは愛姫からだった。
携帯を忘れていたのだから、実家のパソコンからか。番号も覚えちゃいねぇくせに、よく分かったものだ。どうなってんだ、あいつの記憶機能は。

それにしても、いつもは絵文字だの顔文字だと、煩わしさすら感じる内容なのに、今日のは違っている。シンプルかつ簡潔で、まるで仕事相手からのそれのようだ。

“ごめんなさい。
先に帰って下さい。
        愛姫”

こっちでの都合もあるだろうし、別に一緒に帰るつもりもなかったからいいのだが、らしくねぇ短い文章が妙に気になった。
電話をかけようにも、実家の番号までは把握してねぇ。……携帯を携帯しねぇでどうすんだボケが。
仕方なくこっちに電話をかけるように返信をして、洗面所へと向かった。

連絡を待っている状況の今……とにかく落ち着かねぇ。あれから小一時間ほど経つが、まだ連絡はない。いっそ家まで行ってみるかと迷っている。
あいつの親には、こんなついでにというんじゃなく、ちゃんと、それなりのかたちでと思ってはいるが……

───正直に言う。別れ際があんなだっただけに、心配でどうにかなりそうだ。
……まさか変な誤解でもしてんじゃねぇだろうな……

小さな不安が頭をよぎり、ジワジワと体中に広がることに苛立ちを覚えていると、携帯が着信を告げた。
ディスプレイを確認もせずに通話ボタンを押す。

「愛姫か?」
『じゃねぇよ』
「……用件は何だハゲ」
『その様子じゃ仲直りはまだみたいだな。カッカッカ』
「……何で知ってんだ」
『可哀想な姫は号泣してんぞ』
「は?」
『いや、だから愛姫ちゃんだよ』
「連絡とったのか」
『お前何したの? すごかったんだけど』
「……」
『話聞こうにもあんなに泣いてちゃ……』





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