17 あんなに泣いていては無理だったと、半ば呆れ気味で言われ言葉を失う。田中はアホではあるが、そんな嘘はつかねぇ奴だということは知っているし、何よりも…… ───分かっていたことだ……泣いているんだろうことは、想像に容易かったから。 『何をしくじった?』 「うるせぇよ……」 『どうにかしないとお前ポイされちゃうかもね』 「うるせぇんだよ死ね」 『人が心配してやってんのにお前は、』 まだ喋っている途中で切り、ベッドに投げ捨てた。 ……アドレスは田中に聞いたのか。 泣きながら会社にまで電話をかけて、そこまでしてあいつはいったい何を送ろうとしていた? つーかさっき返信したメールにはちゃんと番号書いてんだろうが。とっととかけてこい。 仰向けでベッドに倒れ込むと、安ホテルらしく天井はタバコのヤニで汚れ、いくつかの染みが見える。人の顔のようにも見えてくるそれが、見下ろしながら嘲笑っているような気がして、嫌な気分が助長される。 片腕を頭の下に、残りは顔に持っていき目を覆いながら、大きく息を吐いた。 ───仕方ねぇ…… 鳴らない電話を待っていてもジリ貧だろ。 *←→# |