04
「いただきます」
「ちょっと待った! 食うな!」
「ほぇ?」
大きく口を開けて、プリンを食おうとしたところを制止された愛姫は、キョトンとした目で俺を見る。
「弁当から食え! 甘いのは後だ」
「なんでー?」
「ちゃんと食わねぇとデザートはお預けだぞ?」
「今はプリンが食べたいの……」
涙を浮かべ恨めしそうに俺を見上げる。
そんな顔するなよ。
「飯が先! 嫌なら俺は帰って寝る」
「……分かったよう」
唇をとがらせ一瞬納得できない表情を見せたが、大人しく弁当に手をのばす。
「よし」
弁当を食い始めたのを見届けて、パソコンに目を向ける。
「昨日も寝てないのはどうして?」
言えるか……
「昨日は早く寝たはずなのに。それと愛姫のせいってどうして?」
「うるさい。さっさと食え」
「愛姫がベッドを占領してたから?」
「お前には関係ねぇから」
お前が隣に寝てたせいで寝れないなんて言えるわけねぇだろ。
「でも愛姫のせいだって言った!」
……言ったか? 言っちゃったな。けどやっぱ理由は言えねぇだろ。
お前はまだ知らなくていい。
「……それより食ったら続きやるんだからな。早くしねぇと本当に朝までかかっちまうぞ?」
「!!!」
◆
やっと終わって時計を見れば、もう4時になろうとしている。
「ふわぁぁぁー」
大口開けて欠伸をして目をこすっていた愛姫が、ジっと見てきたかと思えば、俺の目の前に来て、深々と頭を下げた。
「ありがとうございました。部長が手伝ってくれたおかげで……無事に終わりました」
「あ?……なんだよ。急にどうした」
「ちゃんとお礼を言おうと思って……」
「ああ気にすんな。俺も悪かったな、言いすぎた」
「気にしないで? 失敗したのんだし怒られて当たり前だよ。本当にありがと」
そう言いながら微笑む愛姫がたまらなく可愛くて、愛しくて、徹夜続きの疲れも忘れそうになる……
お菓子一つで機嫌が良くなる愛姫と、愛姫の笑顔一つで癒される俺。
……俺がそんな単純な男だったとは、軽くショックではあるが、単純なもん同士。
……悪くはない、のかもしれねぇ。
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