05 「はい! これ食べて」 小さな手にあったのは俺が買ってきたチョコ。 「いらね。それはお前の為に買ったんだから、責任もって全部食え」 「食べるけど! でもこれだけ食ーべーてー!」 無理やり口に入れようと手を伸ばす。 「いらねぇ」 「だめ! お疲れの時には甘いものがいいんだから!」 「甘いもんは嫌いなんだよ」 「でも……」 シュンと下を向いて悲しそうな顔。チョコをのせた手はそのまま伸ばして。 「じゃあそれ、お前が先に食え。そしたら俺も食う」 愛姫は不思議そうに首を傾げながら、パクっと口に入れた。 「おいしー。はい! 次はハルだよ」 「そんなうまいいか」 「ん、食べて」 「……しょうがねぇな。後悔すんなよ?」 言うが早いか愛姫の唇を奪う。いきなりのキスに驚き目を見開く愛姫が、俺の胸を押し離れようとするが、そのまま舌を入れ絡める。ジタバタと暴れていたが、腕を捕まえてみると、諦めたように大人しくなった。 「ん、甘いな」 唇を離し呟くように言うと、涙目で放心状態になった愛姫が、そのまま砕け落ちた。慌てて抱きとめて、ゆっくり座らせる。 「……今の……なに?」 「……味見? チョコの。食えって言っただろ」 「なんで、舌……」 「普通は聞かないだろ」 「だって今のは……キスとは違った……」 いや、想像の範疇ではあるが、さすがにこんな知識もねぇとなると、もう少しだけでも考えて行動すれば良かったか…… 「嫌だったか?」 「嫌じゃない……でも、」 「キスだよ」 「違った……だって……舌……」 あー……言葉で説明するのも難しい。それ以前に知らねぇことに驚くが。 「あー……なんつうの? ディープキス?」 「ディープ?」 「ああ。聞いたことないか?」 「ある……そっか、あれがディープキスってやつなんだぁ」 そしてその言葉を意識したのか、それともさっきのキスを思い出したのか、一気に赤く染まる愛姫の顔。 「そ。お前のことが、好きで好きでたまらないってことだよ」 不意に言葉を伝えてみると、愛姫はピクンと小さく震えた。 「嬉し……い。ありがと……」 「ッツ……!」 俺の目を見て言ったその顔に、男なら当然だろうが欲情してしまう。 くそ……可愛いな。 *←→# |