03 田中に言われるまでもなく戻るつもりだった。この俺が置き去りにするわけねぇだろが馬鹿が。 苛々しながら車に乗り込み、コンビニへと向かう。 愛姫が好きそうなものを適当に選び、俺的に受けつけはしねぇデザート類や、チョコなどもカゴに入れる。 見ているだけでも吐きそうだ…… しかし一人落ち込んでいるだろうアイツのことを考えるとつい、無駄に手をのばしてしまう。こんなに食うのかという考えも浮かんだりもしてしまうが。 いっぱいになったカゴを持ち精算を済ませ、両腕にぶら下げた袋の中身を確認しては吐き気と戦いながら、車を走らせ会社に戻る。 ◆ 「えーん、終わんない!!」 真っ暗な会社の中を歩いてたところに聞こえてきた愛姫の声。 「くすん……ハルのばか……」 泣きながらパソコンを睨んでいた。 「誰が馬鹿だコラ」 「キャー!!」 急に声をかけたせいで驚き悲鳴を上げた。 「うるせーな。俺だよ」 「……ハル?」 振り向いて泣きながら俺を見る愛姫を見て、みんなの前だったとしても、言いすぎたかと少し後悔した。 「どのくらい進んだ?」 「……聞かないで」 ほとんど進んでないのだろう。 「隠してもしょうがねぇだろ。見せてみろ」 俺に見せまいと両手を広げ、一生懸命に立ちふさがっている愛姫を引き寄せ見てみると 「……思った以上にできてねぇ……」 「……ごめんなさい」 「はあ……昨日も寝てねぇのに。お前のせいでまた徹夜かよ……」 「え?」 「お前はしばらく休んでメシでも食っとけ」 たっぷりと買い込んできた袋を指差して言うと 「わあ、ありがと!」 嬉しそうに目を輝かせ、ガサガサと袋をあさる。 「あっ、チョコだ! ミルクプリンもある! こんなにたくさん高かったでしょ? ありがとう」 「コンビニだぞ。安いに決まってんだろが」 例えばコンビニじゃなく、高級レストランのフルコースだとしても。例えばそれが、巷で騒がれている高級スイーツを一年分だとしても。 安いもんだろ。そんなもんでお前のこの笑顔が見れるのなら。 *←→# |