星空の瞬き 星だけを愛してよ 散らばった制服を着直して体育館倉庫を出る。夜空には数えきれないほどの数の星と星よりもとても輝いている大きな月。 「まるで私達みたいだね、月子。」 独り言は夜空に消える。目を閉じれば思い出す。月子と錫也と哉太と見た夏の大三角。デネブとアルタイルとベガを見つける私たち。まだ少しの劣等感しか抱いて居なかった私と私のその心に気づいて居なかった貴方達。 「…っこんな所に居たんですか…。」 知った声が後ろから聞こえたから空から視線を外して振り返るとやっぱり颯斗と琥太郎先生の姿。 「あら、颯斗、琥太郎先生。久しぶり。」 するとツカツカと近づいて来て私の肩をがっしり掴む。 「久しぶりじゃないですよ。2日も学校に来ないし、電話にも出ないし…部屋に行っても返事が無いから寮監に部屋を開けて貰ったら中に貴女は居ないし…それにこんな暗い所に1人で居て何かあったらどうするのですか!!」 「お前は女という自覚が無いのか。この学園には女子が2人しか居ないんだぞ。何かあったらどうするんだ。お前にもしもの事があって悲しいのはおまえだけじゃないんだぞ。」 本当に怒っている。月に照らされた2人の顔は真剣そのもので。 「ごめんなさい。大丈夫だよ、何にも無かったから。さ、帰ろう。お腹空いちゃった。明日からちゃんと学校にも行くからさ。」 ほら早く…そう言って2人の間に入って2人の手を取って歩き出す。 嘘を吐いて何事も無かった様に笑うのは慣れているはずなのに、こんなに心が痛いのは久しぶりだった。 ☆★☆★☆★ 部屋に帰ってきて直ぐにベッドに飛び乗る。 あの後結局、2人に相談する事が出来なかった。言おうとすると喉が震えて声が出なくなる。 あの2人が夕方の真実を知ったら私から遠ざかってしまうんじゃないかって。私の事を嫌いになってしまうんじゃないか。 私の居場所が無くなってしまうんじゃ無いかって。 ☆★☆★☆★ それは突然の出来事だった。 『1年神話科、夜久星羅。今すぐに生徒会室まで来い!』 私はびっくりして颯斗の方を向くと颯斗もびっくりした様に私たちの方を見ている。 「一緒に行きましょうか?」 そう颯斗は言ってくれたけど、私は大丈夫。行ってきますと言って席を立ち、教室を出た。 ☆★☆★☆★ 失礼します。そう言って入ると中には銀髪の先輩。 「おぉ、お前が月子の妹か!!俺は生徒会長の「不知火一樹でしょ。」お…おぉ。」 「しらばっくれないでよ。貴方、神社のお兄さんでしょ。」 そう。月子を危険に晒した男。過去の出来事の罪滅ぼしをする様に月子を守る男。 「何の用ですか。」 星羅が問うと一樹は真剣な顔になる。 「お前、昨日の夜は何処で何してた。」 「どうしてそれを聞くんですか。ストーカーですか。」 私がふざけて答えると、真面目に答えろと怒られる。 「外でお散歩をしていましたが何か。」 「本当にそれだけか。」 えぇ。そう答えると嘘だなと言った。そしてまた一言。 未来を変える行動をしただろ、と。 「何故知っているのかって顔だな。俺は一度お前が月子の未来を変えたのを見たことがあるからだ。昨日も未来が視えたから月子を探しに行った。俺が行った時、月子は既に男子達に絡まれた所を通り過ぎた後だった。」 「…勝手に変わったんじゃないんですか?」 「そんな筈は無い。俺の星詠みは絶対に当たる。月子は男子生徒に絡まれずに俺の所に来たんだ。月子を助け出す奴なんてお前位しかいない。…どうやって助けたんだ?お前はそれなりの代償を払っている筈なんだ。」 「私はやってません。」 私は動揺するのを悟られないように彼の真っ直ぐな瞳を見る。 「俺は心配なんだ。俺だけじゃない。月子達だって心配してるんだぞ!」 …結局月子じゃないか。 「お前は月子がいつもどれだけ心配しているのか知っているか?どんな思いでお前の後ろ姿を見ているか知っているのか?」 「月子月子月子って煩いのよ!!月子が何よ!!月子なんて…っ助からなければ良かったのに!!」 その瞬間、頬に痛みが走った。ヒリヒリする。頬を叩かれたと理解するのには少し時間がかかった。 「好い加減にしろっ!!お前、何言ってんのか分かってんのか!?」 「煩い煩い煩いっ!!黙れっ!!私に関わんないでよ!!変な同情なんかいらない!!」 私は生徒会室を飛び出した。 (星だけを愛してくれる人なんて) (この世に存在するのだろうか。) ←→ [戻る] |