それが恋だから 犯罪ですかA そのサラサラな髪にぼーっと見惚れていたら、記入を終えた彼は、長い指で注文用紙をこちらにスッと滑らせた。 それを手に取って、確認のために目を通す。 …角ばって流れるような、男らしい文字。 「えーと……っ!!」 『作品名:硝子越しの君』 『出版社:白藤文庫』 『著者:如月 充散』 『氏名:北海 太郎』 『連絡先:080-2051-****』 ――ほっかい たろう!? これ本名!? 「くっ………」 彼にまるで似つかわしくない、書類の記入見本みたいな名前に、笑いが一気に込み上げてくる。 ――ヤバい! 笑っちゃ駄目だ!! 俺は思い切り目をかっ開いて、唇の内側を噛んで気合いで堪えた。 「承りました…ほ…北海様、入荷…しましたら…ご連絡致し……ます…」 なんとか…なんとか言えた。 偉いぞ! よくやった、俺!! 彼は眉をしかめた不機嫌そうな顔で軽く頷いて、俺の左胸をじっと見つめた。 「…鷺沢?」 …正確には、そこにくっついてるネームプレートを。 「はいっ!」 話しかけてる! 俺に!?彼がっ! しかも名前呼ばれちゃった! [*back][next#] [戻る] |