労逸
さん
「いつもエドワード君が側に居てくれるとこっちも助かるのだけど…」
物凄い勢いで書類にサインをしていくロイの様子を廊下から窺いつつ、リザはぼそりと溜め息混じりに呟く。
ごもっとも…。ハボックは静かに同意の意を示す。
「オレがなんだって?」
突然の背後からの声に振り返ると、大きな鎧のアルフォンスと小さな…否、史上最年少国家錬金術師、エドワードが立っていた。
「おっ、大将!」
「こんな所でなにしてんの?」
エドワードの問掛けを無視し、リザが微笑み、
「…二人とも長旅で疲れたでしょう? 今、お茶いれるわね」
穏やかリザの笑みには有無を云わさぬ迫力があり、エドワードは二人に促されるまま執務室から離れた。
「あ‥、オレ大佐に報告書…」
二人の強引さに嫌な予感がしてエドワードが言うと、
「良いのよ。エドワード君が行くとまたサボるから」
リザはエドワードの前に紅茶を置きつつ即答する。
あいつまた仕事溜めてたのか…
呆れつつ、人質の様な扱いを受け嫌な気分になる。
たく‥。三ヶ月振りに顔見せに来てやればこれかよ……
「兄さん、お茶冷めるよ? 具合でも悪いの?」
ふてくされるエドワードの顔を覗き込む。
「な‥っなんでもねえよ!!」
慌てて紅茶のカップに口を付け‥‥
「大佐の恋人も大変だねぇ」
「ぶほっ!!」
さりげなく弟が漏らした言葉に思わずエドワードは吹き出した。
「なっ‥なっ‥!? なに言ってんだよアルっ」
この動揺振り
ボクを舐めて貰っちゃ困るよ
と言うより、判んない訳ないじゃない 兄さん判り易すぎだ
……兄さんが幸せならそれで良いんだけどね
アルフォンスは思い、心の中でからかう様に微笑んだ。
誤魔化す様にお茶を啜り飲むエドワードをアルフォンスはまるでペットを眺めるかの様に見遣る。
目が合った。
「何だよ?」
「別に」
それがエドワードには馬鹿にされた様に映り、「帰る」と言い出す。
「え? ちょっと兄さんっ大佐に会っていかないの?」
慌ててアルフォンスが止めに入る。が、
「報告書はもう中尉に渡したんだから別に会わなくても良いだろ」
逆効果となりスタスタと出口へと歩き出す。
「大佐がっかりすると思うよ?」
少しだけ、動きが止まる。
go on‥→
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