労逸
よん
アルフォンスが止めるのも聞かず、軍部を出た二人は国立図書館に来ていた。
蔵書を読み漁るも相変わらずエドワードの機嫌は治らず、本を睨み付けている。
たくっ……、兄さんは素直じゃないんだから
大佐も大佐だよ
兄さんが気が短いの知ってて仕事溜め込むなんて……ホントこっちの身になって欲しいよ
アルフォンスの溜息が空洞に響いた。
丁度時を同じくしてリザもアルフォンスと同じ様に溜息を漏らしていた。
「いつもこうだと良いんだけれどね」
「いつも何かに付けてサボリますからね。其れにしても、中尉……、あの書類、提出期限まだ大分余裕あるんじゃないスカ?」
「えぇ、こんな時じゃないと真面目に仕事しないから丁度良いのよ」
にっこりと朗らかに微笑み言って退けるリザにハボックは拍手を送る。
やはりこの人には逆らってはいけないな。内心そう思いながら。
ロイの実務が終了したのは定時を裕に超え、黒の帷が深くなった頃。夜が遅い中央でも闇夜と呼べる時間。
深夜迄華やかな風景が彩る街が今はすっかり静まり返っている。
「はぁ、こんな時間か…
鋼のはもう眠っているだろうな」
窓の外を眺め、愛しいエドワードを思い憂い、机に突っ伏した。
「お疲れ様です。大佐」
リザが熱いお茶を机に置き労を労う。
「あぁ。ありがとう。
付き合わせて悪いね」
リザは見張りとしてロイの残業に付き合っていた。それはロイも承知の上だ。
でないとロイは隙を見せれば直ぐ様エドワードの元へ行ってしまうだろう。
リザが見張りをしている以上、ロイは抜け出す事は出来なかった。
肩を落としたまま心の内で溜息を漏らしながらロイは熱いお茶を啜った。
「大佐、二日間休暇の申請をして置きました」
突然のリザの意外過ぎる言葉にロイは口に含んだお茶を吹き出した。
「今、なんと言った?」
「……口をお拭き下さい」
無表情に渡されたハンカチを受け取り、すまん。と言い放心状態の儘に口を拭く。
そんな様子のロイを見て、リザははにかむ様な苦笑いをし、困惑するロイにもう一度、今度は詳しくゆっくりとした口調で話した。
「実は今日大佐にサインを頂いた書類は全て期日前の書類です。
これだけこなして頂いたのですから、二日間くらいお休み頂いても執務に支障は来さないでしょう。
ゆっくりお過ごし下さい」
「中尉……」
部下の気遣いに感無量のロイ。言葉を詰まらせリザを見詰める。
「但し、何か急な用事が出来たら直ぐ呼び出しますから覚悟して下さい。
それと、今日の事でエドワード君はご立腹ですので」
穏やかに微笑むリザに大佐も微笑みを返した。
「それは骨が折れるな。
すまんが留守を頼むよ」
「はい」
労逸。
楽在れば苦在り。
斯くしてロイが自らの努力で勝ち取った二日間、どう過ごしたかは皆様のご想像にお任せします。
きっと想像の範囲内かと思われますが…………。
end‥
ユーモアを加えたかったんですが、微妙ですねυυ
すみません。
こんなんですが、ご意見下さると嬉しいです。
2008.8.27 七尾 奎
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