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長編ホラー
辿り着いた世界
始業式を終えた立海大付属中学。
この学校のテニス部は全国優勝二連覇中の全国屈指の強豪校だ。三連覇を目指すため、王者でいるため練習は厳しく休みは滅多にない。
今日は貴重な休みだったが、赤也が立海レギュラー陣を練習に誘っていた。


「良いじゃないッスか。行きましょうよ先輩達」
「赤也!話を聞いとらんかったんか!これから入学式があるから、コートは使えんと散々言っただろう」
「でも、」
「言い訳するとはたるんどる!!」


赤也の言い訳は最後まで聞かれることなく、真田に一喝された。まだ何か言いたそうだが、これ以上粘れば確実に鉄拳が飛ぶことを知っているから黙るしかない。


「だが弦一郎、赤也の意見も一理ある。まだ昼だし練習はできる。精市はどうしたい?」
「…そうだね。どうしようか」
「…ん?」


幸村が考えている横で、前を歩いていたジャッカルが気になるものを見つけた。声を上げたジャッカルをブン太が不審に思う。


「どうしたんだよ?ジャッカル」
「いや、あそこに人がいないか…?」
「人なんかどこにでもいるだろぃ。何言ってんだよ」
「ほらあそこ見ろよ」


ブン太の視線がジャッカルが指差す先に移る。確かに人がいた。立海の制服を着た少女が思いっきり道路に倒れている。


「……ッ!? なんであんなところにいんだよ。おかしいだろぃ」
「おい、大丈夫か?」


驚くブン太をよそにジャッカルは少女に近づく。
お人よしの部類に入るジャッカルは、倒れている少女を放っておくことなど出来ない。
少女から静かな吐息が聞こえる。怪我もないようだしどうやら眠っているだけのようだ。
ジャッカルを見て他のレギュラー陣も少女に気づく。


「なんであんなところに倒れとるんじゃ」
「ジャッカル君。えっと大丈夫なのですか?その子は」


だれよりも紳士である柳生は少女の安否を心配する。


「どうやら眠っているだけのようだな。心配するほどのものではない」
「道路で眠っているだけ!?」


いつの間にか、少女の横まで来ていた柳が冷静に答える。
しかもその少女がただ眠っているだけという事実に赤也とブン太の驚いた声がハモる。


「先輩…?道路で寝てるってだけで普通じゃないッスよね…?」
「このまま放って置く訳にはいかないな。赤也鞄を持て。移動させるぞ」
「移動させるってどこに移動させる気なのかな柳?」
「このアパートで良いんじゃなか?」


仁王が赤也が持とうとした鞄から、素早く鍵と紙を取り出す。どうやら紙には彼女の住所と思われるものが書かれている。


「ダメですよ仁王君。勝手に女性の鞄をみるなんて」
「彼女少し危機管理能力が低いね。俺達だからよかったものの他の人だったら……ね。ふふ」


仁王の意見に反対する者はいないようだった。柳生も注意するところがずれている。何より幸村が少々黒い笑みを浮かべている。こうなったら誰にも止められない。


「それは問題があるだろう」


……頭の固い真田以外は。


「煩いよ真田。それとも何?彼女をこのまま放って置けと?」
「そうは言ってないが……」
文句ないよね?
「……」


やや強引だが、意見はまとまった。
さらに幸村の命令で真田に少女を運ばせることが決まった。


「にしてもこの人誰なんスかねぇ。見たことないッスけど」
「俺もみたことねぇぜ。起きたら礼に菓子くれねぇかな。なぁジャッカル何か持ってない?」
「いきなり振るなよ。あいにく今はこれしかないぜ。ほら」
「サンキュー」
「そればっかりじゃな丸井は。でも、俺は彼女の名前を知ってるぜよ」
「なんでだよ?」
「ずるいッス仁王先輩。教えてくださいよ」


2人が訪ねても仁王は答えようとしない。見かねた柳生が遂にため息をついた。


「生徒手帳を勝手に見ましたね…」
「プリッ」
「ちょっと貸してくれ」


柳が仁王から生徒手帳を受け取る。そして名前を読み上げた。


「彼女は月村夜風。学年は3年生だな。どこかで聞いたことがあるきがするな…この名前」
「えっ俺、新入生かと思ってました」
「見た目で人を判断してはいけません」
「すいません……」
「柳、その生徒手帳は今年のかい?」
「そうだ」
「じゃあ、変じゃね?」


流石にブン太も異変に気付く。赤也だけが頭にはてなを浮かべている。
 

「良く考えろよ。俺ら今日進級したんだぜ?新しい生徒手帳はまだもらってない。お前のはまだ1年って書いてあるだろ」
「そう言われれば…。確かに変ッスね」
「同じ学年ならどこかで会っていてもおかしくない。だが見た覚えはない。彼女は転校生という可能性が72%だ」
「72%か。割と高いね。こんな所で話していても目立つだけだ。早く移動するよ」


そして彼女は自宅に運ばれた。


本来なら、一女子生徒にレギュラー陣が関わる義理はない。
だが幸村は直感で感じていた。彼女には何かある、と。何か面白いことがこれから起こりそうで、ついつい関わってしまっていた。


「何かが始まる予感がするよ。いや、彼女を拾った時点でもう始まったかな…?ふふ…彼女をマネージャーにするのも良いかもね」
「何か言ったか幸村」
「いや何も」


幸村の独り言は、最後尾を歩いていた仁王以外に聞かれることなく静かに消えた。


どうしようヒロイン起きてない…
しかもまだまだホラーに行けない。一体いつ行くんだ!
次回やっとヒロイン起きるはずです。
ホラーはちょっと待って……?
5/6 更新

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あきゅろす。
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