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長編ホラー
終わりは始まり
逃げろ   逃げろ!   逃げろ!!


体が脳が目の前の出来事に拒絶反応を起こす。


霊感なんてないから幽霊なんて見えるはずもないと思っていたのに。
妖怪や化け物なんて漫画の中だけの存在だと信じて疑わなかったのに。
逃げなくちゃいけないのは理解してるのに、体が言うことを聞かない。


目の前の青年であって、青年でないモノ。
『ソレ』が夜風に嗤いかける。


「アーァ可哀想ニ。情ナイ男達ダネ?オマエヲ犠牲ニシテマデ生キヨウトスルナンテ」
「……う…ぁ…ち、ちが」


『ソレ』の与える恐怖が夜風から今にも正気を奪いそうになる。いっそ狂った方が楽かもしれなかったが、今の発言を否定する気持ちだけで自我を保っていた。


「違ワナイ。オマエハ僕ヘノ生贄ニサレタンダ」
「なッ…んで…?」


私は見捨てられた? そんなにも足手纏いだっただろうか。
ねぇ友達だと思っていたのは私だけなの…? 少なくとも部活の仲間じゃなかったのかな…。


「信じてッ…たのに」
「大丈夫。君ノ魂ハ喰ラッテアゲルカラ独リジャナイヨ」


夜風は静かに涙を零す。近付いてくる『ソレ』を無表情に見つめたまま。その瞳の奥に映るは絶望という名の深い闇。


「……」


ズキッ

心が痛いよ。これが裏切られた痛み? たった独りぼっちの気持ち?
こんな胸が張り裂けるような感覚なんか知りたくなかったなぁ。もうニ度と繰り返したくもない。
信じなかったら、裏切られなかった? 最初から独りだったら、独りの寂しさなんて知らなかったのに。


全てを失った。信じる勇気も、友情も。もうじき命さえ奪われる。これ以上失うものは何もない。


私、もう死んじゃうんだ。なんで今こんなに冷静なんだろ?
次は間違えないようにしたいなぁ。もう悲しい思いはしたくないから…。


夜風は目の前に迫りくる『死』をどこか他人事のように見つめていた。恐怖は、感情は既に凍り付いていた。
『ソレ』はニヤリと嗤った顔でゆっくり夜風の頬に触れた。
手から伝わる冷たすぎる体温が妙に気持ち悪かった。


「アレ? オマエ…」
「…?」


『ソレ』が今までとは違い、真剣な表情になった。


「オマエ、コノ世界ノ魂ジャナイナ…。今喰ッテモ不味イ」


そう言って夜風から手を離す。


私、殺されない…? 興味を失ってくれた…?
早く逃げ出したい…!


希望が見え始めると、感情が溶け始めた。
恐怖が蘇って体が小さく震える。


「オマエハ、漫画ノ中カラ出テ来タ逸レ魂ダ。元ノ世界ニ戻シテヤル」
「えっ…?」


「勘違イスルナヨ。元ノ世界ニ戻シタ方ガ美味クナルカラダ。少シノ間楽シメヨ?」


夜風の意識が少しずつ遠くなる。
視界が暗くなって、完全に意識を失った。


「アハハハッ僕ガ行クマデ待ッテロヨ夜風」


まだまだ全然です…
キャラは次回登場予定です
5/4 更新

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