季節シリーズ
16.
「あっ、居たいた」
しばらくして同じ場所を歩いていたら後ろから声がして走り寄ってくる音がした。
「ようやく会えた」
後ろを振り向くとこの場所でぶつかった人だった。
「あれからここに通ってたんだ」
そんな言葉をかけてくる彼に思わず顔をしかめた。
「僕になにか?」
「これ、この間ぶつかった時に間違って俺の鞄にいれちゃって・・困らなかった?」
そう言いながら差し出された物をみると僕のノートだった。
「いや、まだそんなに書きこんでなかったし何処かに置き忘れたのかと思ってたから。もしかして僕を探してくれてたんですか?」
「うん。俺がぶつかったせいで迷惑をかけちゃったなって思って。ここにいればまた会えるかなとおもったんだけど
ビンゴだった。あと、謝らないといけないこともあったし」
謝るってこの間のことだろうか。
「別にぶつかったことなら僕も不注意でしたから」
「それもだけど俺、不用意なことを言っちゃったからそのことを謝ろうと思って」
何のことか判らず「はぁ」としか返さない僕を見てクスクスと笑った。
“可愛い顔で笑うんだな”
そう思いながら彼の言葉を待っていると笑ったことに気がついたのか気まずそうな顔をした。
「えっと・・俺、この間ぶつかった時、謝る前に失礼っていうか変な事を言っちゃって・・覚えてない?
凄い美人って言っちゃただろ?」
「あぁ、そういえば・・」
あれから特に害も無かったから忘れていた。
「その前髪の下からそんな綺麗な顔が現れたから驚いちゃって。とっさに出た言葉だけど初めての人に言う言葉じゃなかった」
そう言いながら「ごめんなさい」と頭をさげる彼にこっちが慌てた。
「あの時は周りに人もいなかったし、いまのところ不都合なことも起きてないですから気にしないで下さい」
「本当?大丈夫だったんなら良かった」
ホッとしたように息を吐く彼を何となく微笑ましく思った。
「わざわざすみませんでした」
「ううん、俺の方こそごめんね。改めて自己紹介すると教育学部1年の石川拓未です」
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